要するに、今の職場にフィットしていない従業員が送り込まれてきて、とても迷惑している。送ってきた、つまりは「使えないヤツを採用した人事部の無能ぶり」を非難する、という構図なのです。確かに、先ほどの愚痴を聞いているかぎりでは、自社の雰囲気と合っていない従業員は採用すべきではなかったでしょうし、求められる仕事にマッチしない人は採るべきではなかった。
そこで、話をすべて聞いた私は、次の台詞を投げかけます。「そういう話は人事部にしたのですか?」と。すると決まって「していませんよ。しても同じだし、何も変わらない。そもそもそれは私の仕事じゃないし」と、どんな人に聞いても大体似たような言葉が返ってきます。もうお気づきですね。これでは、職場に送られてくる人はいつまで経っても「使えない」のです。
この“使えないヤツ問題”、ポイントが2つありました。1つは「職場風土とマッチしない」つまり、個人の資質の問題。もう1つは「仕事の能力がマッチしない」要は、求める能力と持っている能力にミスマッチが起きているケースです。このように整理してしまうと、どちらも当たり前すぎて、まったく驚くことでもない……そんな気がしてきませんか。
問題は、その「当たり前すぎる状態」なのです。人材採用を担当する人事部はミスマッチ問題に頭を抱えています。考えてみれば当たり前で、お金をかけて人を採用したのに、現場ではどうやらまったく使えないと烙印を押される始末だし、採用された人もその雰囲気に飲まれてしまって早期離職してしまうしと、いいことは一つもない。人事もいろいろ手を打とうとはしています。
しかし残念なことに、人事部は現場のことがよく分からない。大事なことなので、2回書きますが、特殊な例を除いて、人事部の人間は現場のことをよく理解していないのです。現場の風土も、細かい仕事のことも。もちろん、自社のことだから大まかなことは理解しています。が、詳細には分かっていない。
職場におけるミスマッチは、いろいろな理由がありますが、その多くは「採用する人間と、それを受け入れる人間に、意思疎通が十分にはかれていない」ことが原因です。だから、採用を担当する人事部ではどんな人を採っていいのか、いや、そもそもどんな人を募集したらいいのか(本人たちは口が裂けてもそんなことは言いませんが)よく分からない……という状態になってしまうのです。
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