「寝台特急あけぼの」を残す、ひとつのアイデア杉山淳一の時事日想(4/5 ページ)

» 2014年02月28日 08時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

JR東日本の「言い訳」を封じるには

秋田新幹線車両保有株式会社の経営概略書(出典:秋田県Webサイト)

 私が乗車できた時の「あけぼの」は、乗車率も悪くなかった。人気列車と言える。しかし、JR東日本は「乗客数の低下」と「車両の老朽化」を掲げている。残念ながら、JR東日本にとって、ビジネスとしての魅力が薄まっていることは読み取れる。秋田の人々の行動も情に訴えるだけで、それでは互いに話し合いのテーブルにつけないだろう。

 要望書を提出した自治体、商工団体が「あけぼの」を存続するためにはどうすればいいのか。言うはたやすいことだが、JR東日本の「乗客数の低下」と「車両の老朽化」という言い訳を封じ込めればいい。つまり、要望する団体が新車両の調達費を出資し、乗客数が満たなかった場合の運賃を補償する。存続を願う本気度を、お金で示す。これでJR東日本は存続に前向きになってくれるはずだ。

 杉山の話は「自治体に金を出させろ」ではないか、と叱られそうだが、自治体が車両を調達する案は、秋田県にとっては実績がある。秋田県は新幹線「こまち」の運行開始にあたって、E3系新幹線車両を購入し、JR東日本にリースしていた。具体的には秋田県とJR東日本が車両保有会社として「秋田新幹線車両保有株式会社」(以下、秋田車両)という第三セクターを設立した。秋田県は資本金の99.6%、115億2500万円を出資し、JR東日本が同0.4%の5000万円を負担していた。実質的に秋田県の会社である。

 JR東日本にとっては車両の購入費や車両保有に伴う税負担が減り、リース料は全額経費の扱いである。JR東日本の開業費負担を軽減する意味があり、これは秋田県からJR東日本に対する援助だ。それだけ秋田県の「秋田新幹線こまち」に対する期待が大きかったといえる。

 秋田車両は当初、80両の「こまち」車両を保有。その後、乗客数の増加に伴って増結した車両はJR東日本が購入している。また、増発に伴って増やした車両もJR東日本が保有していた。リース期間終了後、開業時からの80両はJR東日本が残存価値で買い取り、秋田車両は秋田県に出資金を返還して解散している。この会社は非常勤取締役5人、社員3人だった。第三セクターと言えば天下り先と目の敵にする人もいるだろうが、この会社がなければ「こまち」は最低限の車両しか走らず、成功しなかったかもしれない。秋田県とJR東日本の見事な連携だった。

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