「寝台特急あけぼの」を残す、ひとつのアイデア杉山淳一の時事日想(3/5 ページ)

» 2014年02月28日 08時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 それでも、要望書に関わった人々の気持ちも分かる。「あけぼの」は単なる移動手段ではなく、心のよりどころなのだ。さかのぼれば1960年代の高度成長期、集団就職で上京する列車が「あけぼの」だった。いや、裕福な子や大事な娘を送り出す列車が「あけぼの」で、ほとんどの子供は急行「津軽」や団体臨時列車だった。そんな人たちにとって帰省時の特急「あけぼの」は、故郷に錦を飾る列車だった。そんな列車がなくなるとは寂しかろう。ただ、この精神的な寄りどころは、夜行バス世代の若い人には通じないかもしれない。

 実利的な面もある。代替手段としての夜行バスは、雪深い奥羽山脈越えのルートだ。冬期間の定時制に不安があるだろう。9時間以上も座席に固定されるという旅は若い人にも苦痛ではないか。また、秋田空港と羽田空港を結ぶ航空便は、冬期の2014年1月のデータを見る限り、欠航率は2.5%程度と優秀だ。しかし搭乗率は50%程度である(参照リンク、PDF)。飛行機よりも列車を好む気質かな、とも思う。

 もっとも、それでは鉄道の「あけぼの」が優秀かと言えば、そうとも言えない。秋田―青森間は雪や豪雨でしょっちゅう不通となり、「あけぼの」の運休は意外に多いという印象がある。私も過去4回の予約のうち2回は運休となって、新幹線に振り替えた経験がある。口の悪い鉄道ファンは、運休した「あけぼの」を「まけぼの」と揶揄(やゆ)する。「JR東日本が夜行列車をないがしろにしているのではないか」という気持ちがこもっている。

使用車両は30年以上も走り続けている

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