土肥: 深谷さんは1990年代前半に米国で仕事をされていて、そのときに現地のスーパーを見て驚かれた。防犯カメラをマーケティングに使っていたんですよね。日本のスーパーよりも一歩も二歩も先を進んでいたわけですが、いまでもその差はあるのでしょうか。
深谷: お客のデータを分析する、という意味ではかなり進んでいますね。例えば、Aさんは「毎週1回、買い物に来る。重いモノを買う」というデータがあるとしますよね。その場合、お店は、Aさんにどういったサービスを提供すると思いますか?
土肥: うーん……毎週1回来てもらっているので、ポイントを付けるとか?
深谷: それは日本のスーパーにありがちなサービスですよね。値引きのクーポンを提供したり、ポイントを5倍にしたり。
もちろん欧米のスーパーでもそうしたサービスを提供しますが、Aさんの場合、重いモノを買っているので“お店までクルマで来ている”可能性が高い。なので、「配達料0円」といったクーポンを渡すんですよ。このほかにも、来店されたときにガソリンスタンドに寄っていることが分かったら、ガソリン価格を安くするクーポンを渡す。
土肥: ほー。
深谷: もちろん、商品の値引きを期待しているお客には、値引きのクーポンを渡すんですよね。その一方で、商品の価格は高くてもいいから、いいサービスを求める人もいる。ある商品を何度も購入している人には、それに関連するグッズを提供する。グッズは非売品なので、ファンにとってはたまらない。それだけで、お店へのロイヤリティが上がりますよね。欧米のスーパーをみていると、価格だけではない価値を提供している感じがしますね。
土肥: でも、それって面倒ですよね。現場で働いている人から「ただでさえ忙しいのに、そんなの無理、無理」といった声が聞こえてきそう。
深谷: だからポイント5倍、10倍……といった形になってしまうんですよ。
土肥: 日本人って「きめ細かい」というイメージがありますよね。スーパーでも「お客さま第一」と感じていましたが、欧米の話を聞いていると、あれ? ちょっと違うかも……と思ってしまいますね。逆に「大雑把」というイメージがある欧米のほうが「きめ細かい」。
深谷: そうなんですよ。欧米のスーパーは、ものすごく「きめ細かい」。
土肥: なるほど。深谷さんの話を聞いていて、日本のスーパーの未来像がちょっぴり見えてきました。本日はありがとうございました。
(終わり)
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