「気付けば、まったく知らない会社で働いていた」悲劇はなぜ起きるのかサカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(2/3 ページ)

» 2014年02月17日 06時04分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]

新卒で入った会社から、知らない会社に移っていた

 「シェアードサービスのことだよね?」という声が聞こえてきそうです。企業が何をやりたかったのか、よく考えれば分かるのですが、働いている当事者だけの話を聞いていると、まるでジェットコースターに乗っているような展開で戸惑っているのがアリアリと分かりました。最初は「自社のやり方を開発会社に教える」という役割が与えられる。まあ、理解できます。

 次に「自社のシステムを作ってもらうので、その会社で働いてほしい」と、部署全体が「別のオフィス」に移される。当然、通勤場所も変わるし、働いている同僚は変わりませんが、同期と社屋で会うなどということもなくなります。そのうち「出向という形を取ることにしたから」と言われて、システムを作っている会社の人、という身分になり、扱いも変わってしまう。

 最後には「新会社にみんな転籍することになったし」という報告を受けて、新卒で入社した会社とはまったく違う、聞いたこともない(=できたばかりの会社だから当然ですが)企業に勤めることになってしまったと。ただし、やっていることは今までと変わらない。バックオフィス業務を粛々とこなしているだけ。ただ、勤務地や身分、待遇などは変化し続けたと。

 ころころと変わり続ける環境に、当事者はどう考えたのかと話を聞いてみると「最初、不安があると(サカタに)相談したときには、どうなることだろうと思っていました。けれども、仕事は変わりないし、周りのメンバーにも変化がない。ただ、気がついたら、新卒で入った会社とは別の会社の社員になっていたし、よく見ると福利厚生などの条件も変わっていました」と。

自分は変わっていないのに、いろいろ失ってしまっていた

 同時に「『今後こういう風になる』という説明はその都度受けるのですが、だからといって抵抗する方法もないし、黙って受け入れるしかない。いろんな条件も、会社から変わると伝えられると『はい、そうですか』と言うしかない。産休育休の制度や、受けられるサービスも、微妙に違う。でも、文句が言えたかとなると、そのキッカケすらなかった」と、こぼすのです。

 新卒で入った企業とは資本関係はあるものの、組織としては別なので長く働くことができるのか。業績が悪化したら、まっさきに切り捨てられるのではないか……これまではめまぐるしく変化する環境についていくのが精一杯で、まったく考えもしなかったことが、少し落ち着いた今になって頭をよぎるようになったといいます。

 彼女はさらに「勤めていた企業とまったく関係のない社名になってしまった関係で、自分への信用が少なくなってしまったと感じることもある」と嘆いていました。このあたりは大企業や有名企業に勤めた経験のある人なら、ピンと来るかもしれません。自分自身は何もしていない、何も変わらないのに、周囲だけが激変して、気がついたら「いろいろと失っていた」というわけです。

 「近いうちに、社内で異動があると聞いています。いろんな会社から寄せ集められてきたメンバーをバラバラにして、新しい組織を作るのだと思うものですが、不安です。違う企業文化で育ってきた他の会社の人と、自分が馴染むのか、合わせられるのかって」

 転職したわけでもないのに、まるで違う会社に入社したような不安。まあ実際に、違う会社にいるわけなのですが……。

(写真と本文は関係ありません)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.