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初めての人でもできる「白色申告」――やよいの白色申告オンライン編消費税8%時代の確定申告(3/12 ページ)

» 2014年02月14日 08時00分 公開

クレジットカードの記帳は面倒――帳簿の付け方の基本(6)

 初めて確定申告をする人がつまずきやすいのは、クレジットカードで支払いをした場合の記帳だ。基本は発生主義なので、購入した日を経費が発生した日とする。銀行口座から引き落とされた日ではない。白色申告の場合は購入した日で経費を記帳したら完了。青色申告の場合は銀行口座の入出金も管理してるので処理は複雑となる。

 例えば、2月12日に消耗品を購入したとしよう。複式簿記で記帳すると、

日付   借方       貸方     摘要

2月12日 消耗品 5万円   未払金 5万円  タブレット

となる。消耗品を購入したが現金も預金も減っていないので、この段階では未払金として処理する。4月になり銀行口座からカード代金が引き落とされた場合の記帳は、

日付  借方        貸方      摘要

4月10日 未払金 5万円   普通預金 5万円  クレジットカード引き落とし

となる。電気代、ガス代、上下水道代、電話代、携帯電話代、プロバイダー料金など毎月繰り返される経費に加え、消耗品などをクレジットカードで買っていれば100件以上の記帳を請求・購入時と引き落とし時と2回行うことになる。これはかなり辛い。

事業主借で記帳を簡略化――帳簿の付け方の基本(7)

 クレジットカードで支払った経費をすべて2回記帳するのは面倒だ。これを1度で済ます方法を紹介したい。先ほどの例を次のように記帳する。

日付   借方       貸方     摘要

2月12日 消耗品 5万円   事業主借 5万円  タブレット

 これで終わりだ。ここで登場した事業主借について説明しよう。按分のところでも出てきたように、個人事業主は事業のお金と個人のお金が混じり合うのが普通で、完全に分離するのは難しい。オフィスと自宅を分け、携帯もクルマもPCも2台持ち。財布もクレジットカードも2つを別々にするのはほぼ不可能だ。そこで個人の財布で事業に関する出費をした場合、事業主借として処理する。事業主側から見て個人のお金を借りているということだ。

 先ほどの記帳は、個人のお金を借りて5万円の消耗品を購入したということになる。その個人が財布から現金を出して購入したのか、クレジットカードで購入したのかは関係ない。事業主借と仕訳をしたことで事業用の備品を個人の財布で立て替えて支払ったことになる。言い換えると、個人が事業に出資したことになる。事業主借は累積し決算で自動的に元入金(個人から事業への出資金)としてまとめて処理される。

クレジットカード

 この事業主借で記帳する方法をクレジットカード以外の記帳にも拡大すると、ほとんどの経費の貸方を事業主借とすることもできる。財布から現金で支払っても、銀行口座から引き落としされても、クレジットカードで支払っても経費はすべて事業主借で処理する。こうすれば事業用の現金が動くことがなくなるので、現金出納帳なども不要となる。

 この方式で記帳すれば、個人の預金口座の管理も楽になる。個人の口座からは事業に関係する引き落としがあるが、事業に関係ない生活費、趣味の買い物なども記載されている。そのため、個人の口座残高を帳簿と合わせるために事業に関係ない入出金も帳簿に記帳するしなければならない。振り込みや引き落としされた経費の貸方を事業主借とすれば、個人口座の管理も不要となり大幅に事務作業を減らすこととなる。

クラウド型無料サービスを使って白色申告をしてみよう

 所得300万円以下の白色申告をする事業者も記帳が義務化されたこともあり、圧倒的に青色申告のほうがメリットのある状況となった。とは言え、独立はしたものの節税するほど稼いでいない人や、主婦が趣味で作ったものを売って小さな事業をスタートさせたくらいなら白色申告で充分と考える人もいるだろう。

 本屋などで売られている個人事業主の入門書のほとんどは青色申告に関するもので、白色申告について書かれたもの、白色申告の確定申告書の書き方が解説されたものは少ない。ここでは2014年1月にサービスが始まった無料で使える白色申告のためのクラウドサービス「やよいの白色申告オンライン」を使って、実際に白色申告をしてみたい。

 やよいの白色申告オンラインについて簡単に説明しよう。これはクラウド型の申告サービスだ。Webブラウザ(原稿執筆時点でInternet Explorer 9.0以降、Google Chrome 31.0以降、Mozilla Firefox 25.0以降、Safari 5.1以降に対応)を使うので、WindowsでもMacでも利用できる。

 現状、パッケージタイプの青色申告ソフトはWindows対応のものが主流となっている。筆者はWindowsユーザーなので不便を感じないが、クラウド化でマルチプラットフォームになったのはMacユーザーにはうれしいことだと思われる。

 やよいの白色申告オンラインは、2014年12月31日までは無料で利用でき、継続利用する場合は年間4500円(予定)。銀行口座、クレジットカードなどのオンラインによる取り込みへの対応も予定している。なお、2014年中にクラウド対応の青色申告のサービスも開始予定だ。

 2015年以降はさておき、2014年内は無料だ。当然、まもなく確定申告の受け付けが始まる平成25年分(2013年分)を申告するなら無料で使えるということだ。昨年、平成24年分の確定申告を、記帳せずどんぶり勘定で済ませた人も、「青色申告とは? 白色申告とは? 独立を考える人も知っておきたい個人事業主の税金」で説明したとおり、2014年(平成26年分、平成27年申告)からは記帳しなければならない。

 仮に2014年から青色申告に切り替えるつもりでも、目の前に迫った確定申告(平成25年分)は何らかの方法で白色申告をすることになる。どんぶり勘定で済ます手もあるが、キッチリ記帳してみるのも手だろう。おそらく記帳する体験は個人事業主を続けていくうえで無駄にはならないだろう。もちろんずっと白色申告で充分という人も無料で記帳を体験するチャンスだ。

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