リポートでは、あおる司会者の発言とは裏腹に、空港に到着してすぐにハッキングされる様子もなければ、実験も行っていない。つまり、私たちが普段やるように、「空港に到着して、携帯の電源を入れて、留守番電話やメッセージが届いていないかを確認する」という作業でハッキングされる可能性があるのかどうかは分からないのだ。つまり「入国とほぼ同時に」というのには語弊がある。
だが「入国とほぼ同時に」というイメージを、このリポートとそれを引用して後追いした記事はあおっている。著者も最初にそんな印象を持ってリポートを見たり、記事を読んだりした。だが実際のところ、NBCの記者はコーヒーショップで新しいスマホを起動し、ソチ関連のサイトを閲覧してハッキングされている。これは空港で電源を入れるだけ、という行為とはかけ離れている。
IT専門家たちの批判は次のようなものだ。まず実験がソチではなく、ソチから1600キロほど離れたモスクワで行われていること。ソチで提供されるWi-Fi接続の安全性に対して、「man-in-the-middle attack(中間者攻撃)」などの手法を使ったハッキングの有無を検証したのではない。つまり、ソチに来る人が危険な目に遭うとは断定できない。
さらにリポート内では、記者は「ソチ五輪関連のWebサイト」にアクセスしてハッキングされている。ということは、日本から同じサイトにアクセスしても、ハッキングされる可能性がある。ソチ五輪を見に来てロシアにいるからハッキングされた、と主張するのは間違っている。
少し話は逸れるが、気をつける必要があるとすれば、グーグルは検索を実行する場所によって検索結果の順位を変えることだ。それゆえにロシア以外から検索するよりも怪しいサイトにぶつかる可能性は高くなる。
特にひどいと指摘されているのは、レストランで行われたスマホの実験だ。記者はあらかじめ、スマホのセキュリティ設定を解除していたのだ(アンドロイドで、アプリのマーケット以外のどんなサイトからでもダンロードを許可する設定にしていた)。その上で、怪しいサイトからアプリをダウンロードしている。素人から見ても、そんな無防備ならハッキング被害に遭うだろう、と思うレベルだ。
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