貿易赤字が膨らむ日本、国債信用に更なる危機藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

» 2014年02月12日 06時00分 公開
[藤田正美Business Media 誠]
前のページへ 1|2       

日本国債がヘッジファンドに売られるリスク

photo 日本銀行が最後の買い手として、日本国債を支えているが、それにも限界はある(出典:TOKYOビル景

 問題は、いつまで貿易赤字を所得収支でカバーできるかということだ。2020年ぐらいが1つのメドになりそうだが、一国の国際的な収支が恒常的に赤字化することのインパクトは大きい。なぜなら、ヘッジファンドが日本国債を売るチャンスとして考えているからである。日本政府が抱える借金は1000兆円を超えている。GDP(国内総生産)の2倍を超える借金は、先進国の中ではもちろん最悪だ。

 しかし日本政府は1%を下回るような金利で借金を続けている。海外のヘッジファンドに言わせれば、日本国債はバブルなのだという。日本銀行という“最後の”買い手がいるから(銀行から巨額の国債を吸い上げている=紙幣をばらまいている)、政府は安心して国債を発行できると見ているのだ。

 これは日本の経常収支が黒字だからできる、というのがよく言われる理由だ(経常収支と国債の発行環境との間にどれほどの関係があるかは怪しいが)。少なくとも外資系のヘッジファンドが日本国債を売るタイミングと考えているのが、この経常収支が赤字になるときだという。もちろん実際に赤字になるときではなく、毎月の収支を確認しながら赤字になりそうだという雰囲気だけで、売るには十分な理由になる。

 ヘッジファンドが持つ日本国債が売られるとどうなるか。それを吸収できるだけの余力が日銀にあればいいが、さんざん国債を買っている状況下では、巨額の国債をそう簡単に吸収できないはずだ。そうなると国債の相場が下がる――すなわち長期金利が上がることになる。長期金利が上がれば、もちろん景気に悪影響が出るし、また国債相場が下がれば、国債を大量に保有する金融機関に評価損が出る。

 すでにメガバンクは国債の入れ替えを行い、相場の下落による評価損を抑えているが、地方銀行やゆうちょ銀行はその対応が遅れているという。地銀においては、評価損が大きくなれば、融資などを減らさざるを得なくなる。いわゆる貸し渋りや貸し剥がしが起きるのだ。これが中小企業にどのような影響を与えるかは容易に想像できるだろう。資金繰りに困窮し、場合によっては黒字でも倒産するようなことも起きるのだ。

 外資系のヘッジファンドが日本国債を売り始めたら、日本政府や日銀が何をしても流れは変えられまい。かつてジョージ・ソロスとイギリス政府の間で通貨ポンドをめぐる戦いがあったが、激しいポンド売りの流れに乗ったソロスが勝ち、イギリス政府はポンドを守り切れず変動相場制に移行した。おおよそ20年前、1992年のことだ。

 同じように日本国債を売る流れが始まれば、それを止めるのは容易ではない。そうならない前に、財政赤字を縮小させ、財政再建の道筋をつけておかないと、日本初のソブリンリスク(国にお金を貸しても、返済されないのではないかというリスク)という可能性もある。そのとき国民の生活がどのようになるか。それは若年失業率が極端に高いギリシャやスペインを見れば、想像できるだろう。

関連キーワード

日本 | 国債 | 貿易 | ヘッジファンド | 藤田正美


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.