進むクラウド化、デジタル化―最新会計ソフト活用で業務効率アップ

個人事業主ができる消費税の節税について学ぼう消費税8%時代の確定申告(2/3 ページ)

» 2014年02月10日 08時00分 公開

免税点制度

 消費税額を算出するのは手間がかかる。大手量販店や電力会社などの領収書には消費税分の金額が記載されているが、小料理屋の手書きの領収書などで消費税額の記載がないと105分の5を算出しなければならない。2014年4月以降は108分の8になるので、日付によって税率が異なることになる。

消費税額が記載されている領収書 消費税額が記載されている領収書もあるが
消費税額が記載されていない領収書 消費税額が記載されていない領収書もある

 4200円の領収書なら200円が消費税分なのは暗算で求められる。では、4000円の領収書の消費税分は? 簡単ではない。

 消費税が導入されたのは1989年(平成元年)4月。今でこそエクセルのような表計算ソフトで簡単に計算できるが、当時はWindows 95の発売6年半前。まだPCは一般的ではなかっため中小企業の経理のお姉さんの事務作業が膨大に増える可能性があった。

 そこで登場したのが事業者免税点制度だ。消費税がスタートした当時、課税売上高3000万円以下の事業者は、免税事業者として消費税の納付が免除された。例えば、売り上げが2100万円、経費が1680万円なら受け取った100万円の消費税から支払った80万円の消費税を引いた20万円を納付するはずだが、これが免除されるということだ。2004年(平成16年)から免税点は1000万円以下に引き下げられ、現在にいたっている。

 売り上げが1000万円を超えると消費税を納める事業者(=課税事業者)になるのだが、消費税を納めるのはその年ではない。免税点制度には基準期間という判定する期間が定められていて、その年の前々年の売り上げが1000万円以下か1000万円を超えたかによって免税事業者、課税事業者が判断される。1000万円の売り上げは、免税事業者の場合は税込課税売上高、課税事業者は税抜課税売上高で判断する。

 例えば、平成24年(2012年)に事業をスタートして初年度の売り上げが950万円だったとしよう。そして、平成25年(2013年)は1050万円、平成26年(2014年)は980万円、平成27年(2015年)は1080万円と推移したとする。

免税事業者と課税事業者

 平成24年、平成25年は前々年の売り上げがないので免税事業者となる。平成26年も前々年にあたる平成24年の売り上げが1000万円以下なので免税事業者だ。

 平成27年には、前々年の売り上げが1000万円(免税事業者のときの判定は税込課税売上高で行う)を超えているので課税事業者となる。2015年(平成27年)10月には消費税の税率が8%から10%にアップされる予定だが、話を簡略化するために8%ままだとしよう。

 売り上げが1080万円なので、80万円が受け取った消費税だ。経費として支払った消費税が40万円なら、差額の40万円を納税することになる。平成28年(2016年)は、前々年に当たる平成26年の売り上げが1000万円を下回ったので、再び免税事業者となる(書面提出する)。

 この免税点制度を利用した節税方法は、売り上げが1000万円を超えないようにすることだ。仮にクリスマス時点での売り上げが992万円だとすると、ここで10万円の仕事を受ければ、売り上げが1002万円となり2年後に課税事業者となる(この年が免税事業者の場合)。

 「いやー、年末で忙しくてお請けできません」と断るか、「いつもお世話になっているので、年末特価で8万円で請けさせていただきます」とすれば、売り上げは1000万円以下なので2年後も免税事業者だ。2年後の売り上げによって節税額は変化するが、数十万円の節税になる可能性はある。

 免税点制度の基準期間のルールは平成25年(2013年)から少し変更があり、前年の1月1日から6月30日まで半年間の売上高が1000万円を超えると課税事業者になることになった。これも図で説明しよう。

免税点制度の基準期間ルール

 平成25年の売り上げが6月までに1100万円、年間で2300万円だったとしよう。従来のルールであれば、平成26年は前々年の平成24年の売り上げが1000万円以下なので免税事業者となるはずだったが、新ルールでは1年前倒しで平成26年から課税事業者となる。開業から急速に売り上げが伸びた場合などには、1年前倒しで消費税の課税事業者になる可能性があるということだ。判定基準の1000万円は課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額でも判定できる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.