ソニーから学ぶ 事業撤退の「引き際」数字のオモテとウラを学ぶコラム(4/4 ページ)

» 2014年02月10日 08時20分 公開
[眞山徳人,Business Media 誠]
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 以上のことを考慮して、ひと言でまとめると、従来に比べて「高く売ることも、たくさん売ることも、安く作ることも難しい」。これがソニーのPC事業の現状なのです。VAIOというブランドイメージが十分に威容を保っている今のうちに、売却・撤退を考えるという判断は、“英断”とも言えるでしょう。

 「事業の撤退」というと非常にネガティブな印象が付きまといます。特にVAIOを長年愛用していたユーザーからしたら、「もうソニーのVAIOは出てこないのか……」と感傷的になってしまうのも無理からぬところ。しかし企業の経営は常に、限られた経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)を、少しでも魅力的な市場に配分するという判断が求められているのです。

 今回のプレスリリースでもまさに、スマートフォン、タブレットに注力するという経営陣の意思が現れており、時代の流れを明確に捉えた姿勢は評価すべきだと思います。

 新しい分野に常に挑み続けるという点で、ソニーは比較的上手に主力商品を生み出し続けています(あるいは、続けていた)。ソニーを世界的企業に押し上げたウォークマンに始まり、ゲーム界に革命を起こしたプレイステーション、デザイン性の高さで定評のあったVAIO、DVDに取って代わりうる媒体のBlu-ray、そしてAndroidスマートフォンでよく売れているXperiaなど。1つ1つが世に「驚き」をもたらしてきたわけです。

 そして、これらの新しいモノが世に出されるときには、古い何かが取捨選択されていることが多く、今回のVAIO撤退報道も、あくまでもそういったバイオリズムの一環なのだ、という捉え方もできなくはありません。

 主力商品は時代によって移り変わっていきますが、1つ1つの商品はソニーの「遺伝子」を受け継いでいるはず。私たちはVAIOの撤退を悲しむことよりも、今後ソニーから新しい商品が生まれてくる――そこに期待すべきでしょう。

(出典:ソニー)
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