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青色申告とは? 白色申告とは? 独立を考える人も知っておきたい個人事業主の税金消費税8%時代の確定申告(2/3 ページ)

» 2014年02月05日 08時00分 公開

青色申告、白色申告って何? その違いを比較する

 サラリーマン時代の筆者は、青色申告という言葉は知っていたが、その中身は理解していなかった。白色申告は聞いたこともなく、青色申告(10万円控除)=通称青10(アオジュー)にいたっては独立して数年経ってからその存在を知った。

 筆者は2006年12月にアイピーアールを開業した。開業に際し税務署に相談にいった。「開業届の提出時期は事業開始から1カ月以内というルール。来年1月に開業届を出せば確定申告を先延ばししてもいいですか」。税金のことがまったく分からなかったので、「確定申告をできれば避けたい、避けられないなら先延ばししたい」という浅はかな考えだった。

 筆者が新製品を記事にする広報業デジタルカメラのレビューなどライター業をしていることを確認した税務署員は「さっさと開業して、撮影に係わる費用などをさかのぼって経費で落とした方が得ですよ。ライター業が赤字になっても、雑誌社との良好な関係のために必要と認められますから納税額は減ると思います。どうしても決算を先延ばししたいなら、12月に法人を立ち上げ来年11月に決算という荒技もありますけど……」と背中を押してくれた。

 得なのか。サラリーマンの経費で落とす(自腹なし)と、個人事業主の経費で落とす(大半は自腹)の違いも知らなかった筆者は税務署員のアドバイスに従ってすぐに開業する決心をした。開業するなら青色申告の承認申請をすると得らしい。その中身は知るよしもなかったが、根がケチな筆者は「得」という言葉に乗って開業届と一緒に青色申告の申請もした。

 サラリーマン時代は原稿料から源泉徴収された税金が確定申告で還付されることも知らず、機材の購入費や撮影のための費用が経費で落とせることも知らなかったので、確定申告をしてみると税務署員が言ったとおり納税額はかなり減った。納税額が減った1つの理由は青色申告を選択したことだ。

 独立する際の選択肢に個人事業主と法人があるが、今回のテーマは確定申告なので法人の話は割愛し、個人事業主について進める。個人事業主として独立する場合は、申告の種類として青色申告と白色申告を選択する。さらに青色申告には65万円の青色申告特別控除が受けられる一般的な青色申告と、10万円の控除が受けられる通称「青10(アオジュー)」がある。簡単に比較してみた。

青色申告(65万円控除) 青色申告(10万円控除) 白色申告
届出 青色申告承認申請書を提出 青色申告承認申請書を提出 不要
記帳の仕方 複式簿記の記帳、貸借対照表の提出、損益計算書の提出 単式簿記の記帳 単式簿記の記帳(平成25年分までは前々年、前年の所得が300万円以下だと記帳不要)
申告期限 3月15日厳守※ 3月15日以降も可 3月15日以降も可
特典 青色申告特別控除65万円、青色事業専従者給与、赤字の3年繰り越しなど 青色申告特別控除10万円、青色事業専従者給与、赤字の3年繰り越しなど なし
白色申告、青色申告比較 ※2014年は3月17日

 最も得なのは青色申告(65万円控除)だ。納税額を減らせる特典がいくつも付いてくる。しかし記帳の仕方、申告期限など条件も厳しくなる。この中で大きなハードルとなるのは記帳の仕方だ。サラリーマンが独立して、いきなり複式簿記で記帳、貸借対照表、損益計算書を作成しろと言われても「何だそれ」と思う人が多いはずだ。そのハードルが越えられれば青色申告特別控除の65万円がゲットできる。

 青色申告(10万円控除)と白色申告を比較すると、青色申告承認申請書を提出するだけで、かなりの特典が得られる。白色申告をしている人は少なくとも青色申告(10万円控除)に切り替えた方が得だろう。

今年大きく変わる白色申告とは

 白色申告は平成26年(2014年)から大きくルールが変更される。平成25年分までは所得が300万円以下であれば記帳義務はなかったが、平成26年分から所得が300万円以下の人を含めすべての人が記帳と帳簿保存を行うことが必要となる。

 まず、これまでの白色申告を確認しておこう。白色申告する人は青色申告の特典はないが、記帳が楽なので確定申告のための事務作業を軽減することができる。平成25年分(平成26年2月、3月申告分)までは前々年、前年の所得が300万円以下であれば記帳の義務がなかった。所得は「売り上げ−経費」なので、売り上げが900万円でも経費が600万円以上であれば所得は300万円以下となり記帳義務がないことになる。

 本来ならば、売り上げも経費も記録を残して(記帳して)集計しないと「売り上げ−経費=所得」の算出ができないはず。しかし、ルールとして記帳の義務がなかったので、極端な例を挙げれば売り上げが1億円あっても経費が9700万円ならば記帳しなくてよかった。

 レシートを発行しない現金商売(屋台、小さな小売店など)なら、「うーん、今年の売り上げは500万円、経費は300万円」と、どんぶり勘定で決算を済ませることも可能だった。また、入金が銀行振込の商売だと売り上げは正しく申告するしかなかったが、領収書の保存が必要ない経費は適当に決められたので事務作業も納税額も軽減できた。

 平成26年(2014年)分からルールが大きく変わり、前々年、前年の所得が300万円以下の人も含めすべての人に記帳と帳簿保存が義務付けられた。売り上げや経費を記入した帳簿は7年間、請求書、納品書、領収書などは5年間保管しなければならない。

前々年、前年の所得 平成25年(2013年)分まで 平成26年(2014年)分から
300万円以下 記帳不要 単式簿記の記帳、帳簿などの保存
300万円超 単式簿記の記帳、帳簿などの保存
白色申告の変更

 これにより所得に関係なく白色申告をする人はすべて同じルールの下で確定申告を行うことになった。最低限、単式簿記など簡易な方法による記帳をしなければならない。「単式簿記って何だよ」と思われた人もいるだろう。サラリーマン時代の筆者もそのレベルだ。

 独立後に簿記の本を読んでみたものの、10ページほどで挫折。独立して8年目となったが、青色申告ソフトに頼っているのでいまだに簿記を理解していない。当然、手書きで帳簿を付けることは不可能だが、さわりの部分だけ説明する。

 オフィスの電気代を払ったとしよう。これを単式簿記で記帳すると

2月5日 電気代 6000円

となる。家計簿を付ける感覚と思っていただければ大丈夫だ。実際には科目という考えがあるので、電気代のところに水道光熱費と書き、内容として電気代と記した方が帳簿らしく見える。参考までに複式簿記という記帳方法もあるので、同じ電気代を複式簿記で記帳すると以下の通りだ。

2月5日 水道光熱費 6000円 / 現金 6000円 電気代

 コンビニで支払った場合は上記のように右側が現金となるが、銀行引き落としだとこうなる。

2月5日 水道光熱費 6000円 / 普通預金 6000円 電気代

 筆者自身、複式簿記を理解しているわけではないが、複式簿記で記帳することで手元の現金が6000円減ったのか、預金が6000円減ったのかも分かり、よりお金の動きが正しく記録されることになる。

 複式簿記と比べれば単式簿記は簡単だが、それでも1年間の取引を記帳するのはそれなりに労力が必要だ。2014年からはすべての事業者が記帳しなければならないので、白色申告だから確定申告が簡単とは言えなくなってきた。

 白色申告でもキッチリ帳簿を付けていた人は問題ないと思うが、今までどんぶり勘定で手抜きをしていた人は数年後が危ないと思っている。従来のままどんぶり勘定を続けていたら、5年後に税務署員が来て帳簿や領収書の提出を求められても何もない。

 「経費が多すぎますね。仕入れはこれくらい、交通費はこれくらい、全体で半分だけ経費と認めましょう」なんてことになれば、所得は数百万円増えて納税額が数倍に。それを5年間さかのぼって納税することになれば廃業の危機だ。白色申告をする人もこれからはキッチリ帳簿付けを心掛けたい。

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