紙に比べてタブレットを学習で使うメリットはどこにあるのか。ベネッセコーポレーション家庭学習事業本部長の成島由美氏は、子どもの学習に進研ゼミを使っているが、紙中心の通信教育に限界を感じたという。「例えば漢字の書き順。子どもに書き順が間違っていることを指摘したら、『赤ペン先生はまるをつけてくれた』と反論された。通信教育では書き順が正しいかまでは確認できない」(成島氏)
その点、タブレットであれば書き順の正しさまで判定できるし、回答後すぐに正誤が分かる。問題を解くためのプロセスやかかった時間といったデータも取得可能だ。「消しゴムの消し跡まで褒める、というのが通信添削のポリシーだが、デジタルを使えば褒められるポイントが広がる」と成島氏は強調した。
タブレットから得たデータは、教材の構成にも反映される。「2013年4月から1年弱、タブレットでデータを取得してきたが、例えば算数の問題を2ページ解くのに、理科や社会の2倍ほど時間がかかることや、社会の問題は、知識を学んだ直後にテストを行うと点が伸びやすい傾向があることが分かった。こうした1年分のデータを基に、教材を改善していく」(成島氏)
紙の通信教育における弱点となっていた“質問”についても改善する。中学生以降には、紙の教材で分からないところがあればタブレットのカメラで撮影して質問できる「質問カメラ」といった機能も用意した。
また、デジタルデバイスを使い、子どもの学習意欲を高めるための研究も進めているという。ベネッセ教育総合研究所では、会員内のモニターと協力して研究を行っているが、「ごほうびコイン」といった報酬要素を入れたり、別の会員とコミュニケーションを取れるといったソーシャル要素を加えることで、子どもの学習意欲が高まることが分かってきた。
こうした改善を踏まえ、進研ゼミが目指す新しい学習体験が完成するまでには3年ほどかかるという。「紙の添削ではできなかった、個人個人に合わせた学習コンテンツの提供も行える。これまではわれわれのノウハウや生徒からのヒアリングなどを参考に教材を作ってきたが、これからはデータに基づいて教材を作り直す。教材を作り込むスピードも上げなければならないだろう」(ベネッセホールディングス代表取締役 福島氏)
2013年は会員数が24万人減少した進研ゼミ。少子化などの影響もあるが、デジタル技術の発展で異業種から教育事業に参集する例も増えている。進研ゼミの強みについて、成島氏は会員数の多さと、紙とデジタルのシナジーを挙げた。
「もちろん論文などの記述問題については、引き続き紙で行う。勉強がスポーツやゲームのように楽しくなればいい、というのが進研ゼミの原点。タブレットは子どもとのコミュニケーションの窓になると思っている。デジタルデバイスで進研ゼミが得意としていた人同士の心のふれあいも実現できれば、子どもが夢中になれる学習体験ができるはずだ」(成島氏)
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