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サラリーマン節税のツボ、各種所得控除について知ろう消費税8%時代の確定申告(4/6 ページ)

» 2014年01月31日 08時00分 公開

老人扶養親族(同居老親等/同居老親等以外)

 老人扶養親族は、年末に70歳以上で所得が38万円以下だと控除の対象となる。収入が公的年金のみなら158万円以下だと所得は38万円以下となる。注意したいのは年金の種類だ。一般的に父親が生きている場合は父母とも老齢基礎年金といった公的年金をもらっている。父が亡くなり母だけの場合は遺族基礎年金、遺族厚生年金といった遺族年金を受給しているはずだ。これら遺族年金は公的年金ではないので所得の対象とはならない。仮に年間180万円の遺族年金を受給していても老人扶養親族として控除の対象となる。

 これらの要件を満たし、自分か奥さんの父母、お爺ちゃん、お婆ちゃんで同居していれば同居老親等となり所得税で58万円、住民税で45万円の控除を受けられる。もともと同居していれば長期入院で1年以上家を離れていても同居とみなされるが、老人ホームに入っていると別居の扱いになる。別居の場合、控除額は所得税で48万円、住民税で38万円となる。

 先日、ある出版社を訪問した際に編集者から「奥川さんの記事を読んで、母親を扶養控除に入れようとしたら総務の人に断られた……」と相談を受けた。筆者自身も数十年前に同様な経験をしていて、そのときは「年金の額が多いから扶養親族に入れられない」と言われた。父が亡くなり母がもらっていたのは遺族年金なので金額の制限はないのだが、当時の筆者は公的年金、遺族年金という言葉も知らず話はそれで終わり、20年以上が経過し遺族年金が所得に入らないことを知った。

 ここからは筆者の想像だ。そもそもすべての総務の人が税金に詳しいわけではない。年金が158万円を超えると扶養親族の対象外ということは知っていても、遺族年金が所得の対象にならないという知識が欠落しているかもしれない。

 もう1つは、健康保険の被扶養者は税金の扶養親族より要件が厳しいため、それと混同しているかもしれない。自分の健康保険に親を入れようとすると、別居の場合は親の年金等の収入以上の仕送りが必要だったり、親の収入は遺族年金も含めて計算するなどかなりハードルが高い。税金と健康保険の扶養は別だと認識しよう。

 長生きする老人は多い。仮に70歳から90歳まで20年間控除を受けられれば、自分自身の収入によって差はあるが自動車が買えるくらいの節税になる可能性は高い。「もしかして……」と思った人は親の年金額や種類を確認してほしい。過去に総務に断られた人も再確認する価値はあるだろう。

 所得税と住民税の扶養控除を横軸に年齢、縦軸に控除額とした図を用意した。図を見るとほぼ大学生と70歳以上の老人が扶養控除の対象となると節税効果が大きいことが分かる。

所得税と住民税の扶養控除

 ここまでの説明は親や子を対象としたが、扶養親族の対象となる「親族」は「6親等内の血族及び3親等内の姻族」となっている。筆者自身もピンと来なかったので図を用意した。ハッキリ言って会ったこともない遠い親戚も扶養控除の対象となる親族なのだ。特に6親等内の血族は想像しがたいほど広範囲だ。3親等内の姻族(奥さん側の親戚)にしても甥、姪(奥さんの兄弟の子)も扶養親族の対象となる。

 もしご自身が事業に成功して所得税率40%、お金も有り余っていれば、遠い親戚がリストラ、倒産などで困窮した際に仕送りして扶養対象とすれば税率が高いので大きな節税となるだろう。現実的には仕送りするより雇ってあげた方がベターだと思えるが。

親等 6親等内の血族及び3親等内の姻族

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