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» 2014年01月29日 07時30分 UPDATE

藤田正美の時事日想:靖国神社は“恒久平和”を誓える場所ではない (1/2)

靖国参拝やダボス会議での発言など、安倍首相の中国に対する言動に注目が集まっている。中国の外交官から「好戦的な日本が復活している」と言われ、米国などからも批判を受けているのは何故なのか。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


photo 世界経済フォーラム(ダボス会議)に出席した安倍首相は、中国との関係について、第一次世界大戦前のイギリスとドイツに例えた(出典:首相官邸HP)

 それにしても、安倍首相はなぜ中国に対してこうも攻撃的なのだろうか。2013年末に靖国神社に参拝し、先日行われた世界経済フォーラム(ダボス会議)では、日本と中国の関係を第一次世界大戦前のイギリスとドイツに例えた。貿易で深い関係にあっても戦争になったという例えにダボス会議の出席者はどよめいたという(戦争にならないようにコントロールする、という趣旨の発言だが)。さらにその後インドに向かい、軍の観閲式に出席。中国を念頭に置きつつ、インドとの安全保障上の協力を明言した。

 こうした動きに対し、英国では中国の駐英大使が日本を“ヴォルデモート”に例え、第二次世界大戦前の好戦的な日本が復活しているという主張をした。ヴォルデモートとは『ハリー・ポッター』シリーズを通しての宿敵だ。これに対しては、日本の外交官も反論しているが、こうした言葉の応酬に勝者はいないと英エコノミスト誌が書いている。

 先日はNHKの新会長となった籾井勝人(もみいかつと)氏が就任会見で、従軍慰安婦などの歴史認識について、不必要な発言をして物議を醸した。おかげで籾井会長は安倍首相肝いりの人事でNHKの“偏向報道”を正すために送り込まれた、などと報道されている。

photo 2014年1月25日から1月27日まで、安倍首相はインドを訪問した(出典:首相官邸HP)

靖国神社を参拝する意味

 中国が日本に攻撃的になっているのは、民主党の野田元首相が尖閣諸島を国有化して以来だ。結果論ではあるが、中国につけいる口実を与えたのは野田氏と言える。その理由は、石原元都知事が尖閣諸島を購入して、船溜まり(船が停泊する場所)を建設したりするよりは、国有化して何もしないほうが中国の理解を得られるというものだった。しかしこの読みは完全に外れ、外務省もこの策を止めることができなかった。

 ところがこの民主党の“失敗”を、安倍首相は責めるどころか容認し、さらに増幅させているようにも見えた。それは靖国神社への参拝である。小泉元首相が靖国神社に参拝したときも述べたが、あの神社は“戦争で倒れた人々へ尊崇の念を示し、不戦を誓う”場所としては相応しくない。明治時代に建立されたときから、天皇のために戦う兵士を神としてまつることで、兵士の士気を高めるために使われた歴史がある。

 靖国神社はロイターやフィナンシャルタイムズなどの海外メディアから「war shrine」とも呼ばれるが、その意味では正しい。そこにまつられているのは、兵士だけで一般市民はほとんど入っていない。つまり、第二次世界大戦で亡くなった人々のうち、ほとんどは“ここにはいない”のである。沖縄のひめゆり学徒隊ですら、まつられたのは戦後だいぶ経ってから、それも世間の批判を浴びてからのことだ。

 歴史的に大きな役割を担った施設は、その歴史から逃れることはできない。その意味で、靖国神社は首相が“不戦”や“平和”を誓える場所ではないのだ。

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