米国は「ジャガイモ外交」!? 各国首脳の「贈り物」が面白い伊吹太歩の時事日想(1/2 ページ)

» 2014年01月23日 08時00分 公開
[伊吹太歩,Business Media 誠]

著者プロフィール:伊吹太歩

出版社勤務後、世界のカルチャーから政治、エンタメまで幅広く取材、夕刊紙を中心に週刊誌「週刊現代」「週刊ポスト」「アサヒ芸能」などで活躍するライター。翻訳・編集にも携わる。世界を旅して現地人との親睦を深めた経験から、世界的なニュースで生の声を直接拾いながら読者に伝えることを信条としている。


 2014年1月13日、米国アイダホ州産のジャガイモに世界中の外交関係者やメディアの注目が集まった。

 シリア問題などを協議する米国とロシアによる会議に出席するためにフランスの首都パリを訪問していたジョン・ケリー米国務長官が、協議の冒頭、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相にギフトを渡した。「彼(ラブロフ)にこれを持ってきた」と話しながら、ケリーが段ボールの箱から取り出したのは、2つの大きなジャガイモ。

 両国は最近、シリアやイランの問題、元CIA職員のエドワード・スノーデンの亡命、さらにロシアの人権問題をめぐってバラク・オバマ米大統領が2月から始まるソチ冬季五輪への欠席を示唆するなど、これまで以上にぎくしゃくした関係が続いていた。

 だがジャガイモの登場で、会場はたちまち笑いに包まれた。なぜアイダホのジャガイモだったのか? どうやら、2013年に両者が行った電話会談でケリーがアイダホにある別邸から電話をしていたことや、その会談中にもアイダホのジャガイモが話題に出たから、ということらしい。さらにケリーはクリスマス休暇をアイダホの別邸で過ごしており、ジャガイモをギフトにしたという。

 ジャガイモがシリア問題を解決することはないだろうが、少なくとも協議の潤滑油になったことは間違いない。またジャガイモをめぐって協議に出席した両国高官たちに笑いがあふれたことで、対外的にも両国関係のイメージ改善に少しは役に立ったかもしれない。

オバマ大統領は安倍首相にパターをおねだり

 今回のジャガイモのように、世界のリーダー同士の会合にギフトが用意されるケースは多い。ただの儀礼なのか、国家間の関係を良くするための手段なのかはそれぞれのケースによって違うし、ギフトそのものに「スパイ」工作がなされているケースだってある。いろいろと思惑は入り交じるが、国家間のプレゼント交換というものはずっと続けられてきたし、トップ外交の伝統であると考えてもいい。

 2013年2月、安倍晋三首相はワシントンで行われた日米首脳会談で「山田パター工房」製のゴルフパターをオバマ大統領に贈呈して話題になった。これは大統領の「ご指名」だったようで、さまざまな懸案事項がある日米関係においてオバマを喜ばしたい安倍にとってはいい「お土産」になったことだろう。

 ところで世界唯一の超大国である米国に対して、各国のリーダーたちはどんなギフトを贈呈しているのだろうか。米政府は、大統領が世界のリーダーたちから受け取った贈り物をリストにして公開している(参照リンク)。そのリストには、誰から、米政府の誰のために贈呈されたのかが記されている。

 日本は、安倍首相のパター以外にも、米政府高官に江戸切子や羽子板、深川製磁や九谷焼の花瓶などを贈っている。中国の習近平・国家主席は、オバマに自分のサイン入りのバスケットボールを贈呈したことがある。トルコのアブドゥッラー・ギュル大統領は自ら執筆した自叙伝を、メキシコのフェリペ・カルデオン元大統領はビーズで装飾したコカ・コーラのびんを贈った。

 そして、「いかにも」と思うのが韓国。李明博前大統領は2012年3月に、オバマ大統領の家族に、自国が誇る電化製品であるサムスン電子製デジタルカメラと、同社製のタブレット端末「GALAXY Tab」をプレゼントしている。サムスンの回し者かと勘ぐってしまいそうだ。

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