大使館も共同運営される時代女神的リーダーシップ(3/4 ページ)

» 2014年01月23日 08時00分 公開
[ジョン・ガーズマ、マイケル・ダントニオ,Business Media 誠]

魚は国境など気にしない

 ダマナキはEUの海事・漁業政策の責任者であり、27カ国の合意を形成したうえで、海洋資源を共有するEU以外の国々と折衝しなくてはならない。地中海を監視するために北アフリカ諸国と、北極海を監視するためにロシアとそれぞれ足並みを揃える必要性に触れて、「魚は国境など気にしませんから」と述べていた。

 「不法な漁業活動と戦うには米国や日本の協力が欠かせません。わたしは、合法的で持続可能性の高い漁業の国際認証を実現したいと考えています。これは国連の場でなければできません。ですが、一歩ずつゴールへ近づいていくでしょう。必要なことなのですから」

 常に多くの人の目にさらされる立場だけに、自分がどういった政策を目指しているかが各国や各種の利益団体に正確に伝わるよう、透明性を心掛けなくてはならないとも語った。

 「とことん誠実であるよう努めるほかありません。事実を歪めたり、隠したりしても、それが通用するのはせいぜい1カ月でしょう。ですから、ビジョンや仕事のやり方を改める必要があります。世の中の人々は真実をお見通しです。怒りに燃える人々もいるかもしれません。けれど、解決策を示せば、それを生かしたいと考えるはずです」

 EUが受け入れた解決策では、海洋資源を金銭と同じくらい大切な資本と見なしている。

 「わたしは銀行経営者のようなものです。おカネの代わりに自然資本を持っていて、それを最大限生かさなくてはならない立場にあるわけです。自然資本が枯渇してしまわないように守る責任があります。ある年にすべて使い果たしたら、喜ぶ人も大勢いるでしょうが、次の年には何も残りません。ところが、大切に使えば自然の力がこの資本を再生産しますから、漁獲量、ひいては食卓に上る魚の数が増えるでしょう」

 ダマナキが推進する漁業規制は、持続可能な漁業で獲れた魚を出すレストランを好むような、意識の高い人々から支持されている。そこで彼女は、こうした支持を保つためにも海洋資源の重要性を強く訴えている。欧州では、農業に適した土地や鉱物資源の豊かな場所が足りなくなってきているだけに、なおさらである。「陸地はくまなく開拓されたので、新たな成長や可能性を求めるには海洋に目を向けるしかありません」。過ちを避けながら、食糧、エネルギー源、鉱物といった自然の恵みを海洋から得る方法はあるという。

 「うまく調和を図るには、独裁的なやり方のほうが手っ取り早いのですが、わたしたちは市民を説得して理解を得なくてはなりません。説得を始めるには、自分たち政治家は何もかも知っているわけではないと認めなくてはならないのです。科学者やデータに頼り、市民の協力も得る必要があります。費用と時間がかかりますが、結局はこうしたやり方によって明るい将来が確保できるでしょう」

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