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» 2014年01月22日 07時30分 UPDATE

藤田正美の時事日想:日本に3度目の“石油ショック”が訪れる日

日本で“エネルギー源の多様化”が叫ばれてから久しい。石油エネルギーばかりに頼れない理由は、環境への配慮や石油の枯渇といったものがあるが、実は石油の価格が暴騰するリスクも目の前にあるのだ。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


photo 日本の石油エネルギーを取り巻く環境は厳しくなりつつある

 中国のシャドーバンキング問題については、ここでも何度か触れているが、先週、英紙フィナンシャルタイムズに記事が出た。シャドーバンキングが大きな試練に直面するというのである(関連記事)。この問題が2014年に起こる最も大きなリスクだと考えているが、もう1つ触れておくべきリスクがある。それはエネルギーだ。

 日本は40年ほど前、2度の石油ショックに翻弄(ほんろう)された(1973年および1979年)。そのときの様子をはっきりと覚えている人は、もはやそう多くはない。しかしそれ以来、エネルギーという日本経済の生命線を締め上げられる恐怖が日本人の間に根付いたと言える。

 日本が原子力に本格的に力を入れ始めたのはまさにそれ以降だ。歴史をさかのぼれば、第二次世界大戦で日本軍が南方に進出したのはエネルギーを始めとする資源を求めた結果だった。その意味でも、南シナ海は日本経済の“大動脈”と言える。だからこそ、中国がそこを「死活的利益」と呼ぶのは看過できない。

 そして、日本のエネルギーのうち約半分を占める原油は9割が中東から来ており、そのうちの9割はホルムズ海峡を通って日本に運ばれる。つまり日本が輸入している原油の約8割がホルムズ海峡を通るということだ。このホルムズ海峡はたびたび緊張に包まれる。とりわけイランと欧米諸国との対立が深まると、イランはすぐに脅すのだ。「ホルムズ海峡を封鎖するのは簡単だ」と。

 ただ実際にイランがそれを実行するのは難しい。なぜなら自分たちが外貨を稼ぐためには石油を輸出しなければならず、ホルムズ海峡を封鎖すれば、自分たちの首も絞めることになるからだ。だからイランが「封鎖するというのはブラフにすぎない」と、とある外交関係者は言う。

photo ホルムズ海峡はイランに面している海峡。サウジアラビアなど中東の産油国がペルシャ湾から石油を輸出する際は、ほぼこの海峡を通ることになる(出典:Googleマップ)

イランの“核の平和利用”を信じられないイスラエル

 現在、イランの核開発問題は“小康状態”にある。2013年11月、イランは核兵器を開発する意図はないとし、国連安保理常任理事国とドイツからなる6カ国がそれを前提として、ウラン濃縮を認める方向で合意した。

 しかし、この問題で最も懸念を示している国はイスラエルである。イランのアフマディネジャド前大統領は「イスラエルを地図上から抹殺する」と明言して核開発を進めた。2013年はもしイスラエルがイランの核施設を攻撃するとなれば――というシミュレーションがあちこちのメディアに出たものだ。

 実際にイスラエルは2度、核施設を攻撃したことがある。1つはイラクのオシラク原子炉(1981年)で、もう1つはシリア(2007年)だ。今回はシリアやイラクと違って、イランまでの距離が遠い上、核施設は地下にあるため攻撃は難しいというのが一般的な見方だが、国の存亡がかかったイスラエルは、イランがいかに平和利用と言っても絶対に信用しないだろう。その意味ではイスラエルによるイラン攻撃の可能性は消えない。もしそれが実行されれば、報復でイランがホルムズ海峡を封鎖する可能性もある。

 中東有事は必ず原油価格の暴騰を招く。原油が暴騰すればガスの価格も上がる。米国(やひょっとするとロシア)からシェールガスの輸入が始まれば、輸入価格が下がるという見方が強いが、これは2017年以降の話であるし、国際的にエネルギーの価格が上昇している状況下で、ガスを安く輸入できるというのは非現実的だ。

 その意味では、日本がエネルギー源の多様化を図らなければならないのは自明のことであり、そのうちの1つが原子力であることも明らかである。遠いイランの核開発問題が、日本のエネルギーの根幹を揺るがす可能性があることを忘れてはならない。

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