映像配信サービスで救われた命女神的リーダーシップ(3/6 ページ)

» 2014年01月17日 08時00分 公開
[ジョン・ガーズマ、マイケル・ダントニオ,Business Media 誠]

映像が世界の自由化に果たす役割

 これらはバンブーザーの利用形態としては珍しい部類に属する。ヴィグとアドラーの推計によると、配信される映像の99%超は、少数の家族や友人だけが関心を持つようなものだという。とはいえ、エジプト自由化運動を機に2人は、映像が世界の自由化に果たす役割について深く考えるようになった。彼らは、民主主義的な観点から、監視カメラの映像をリアルタイムで公表するよう市民が政府に要求してもよいだろうとも語った。これが実現すれば、従来とは逆に、市民が公務員の行動に目を光らすこともできるようになる。すると、従来は「公共の場所」ではなかった場所も衆人環視の対象となり、公務員が自分たちの立場にあぐらをかくわけにはいかなくなる。

 映像配信サービスによって、あらゆる場所が世界中の人々の目にさらされる可能性が出てくると、テクノロジーの発展の常として、予期しない結果も生まれるはずである。ヴィグは、トーマス・エジソンの自伝で読んだ、蓄音機の逸話が記憶に残っているという。エジソンは、死にゆく人のメッセージを録音して、近親者に後々まで聞いてもらえるようにするという用途を想定していたのだ。このような使い方も皆無ではなかったかもしれないが、実際には、蓄音機の発明は今日へとつづく音楽産業の誕生を促し、その恩恵によって文化がかつてないほど速く、遠くまで広がった。蓄音機は文化間の垣根を低くし、映画・放送産業の発展を導いた。

 バンブーザーの技術は、これに匹敵するような変化を引き起こすかもしれない。その場合、カギを握るのはハードウェアでもソフトウェアでもなく、利用者だ。スウェーデンに根付く市民意識や参加意識がこうしたサービスの有効な利用に資するだろう。スウェーデンは言論の自由の保障で世界に先駆けたほか、充実した福祉制度は、協力精神や道徳意識の象徴として国民の幅広い支持を得ている。バンブーザーはスマートフォンがあれば誰でも利用できる民主的で平等なサービスでもある。これがあることによって社会や政治について空理空論を振りかざす人々の力は著しく削がれるだろう。権力者は、ごく普通の市民が配信した映像の前でたじたじになる。市民は、映像を見た大勢の人々からの批判に晒される。このような誰でも参加できるコミュニケーションには、それ相応の自信、責任感、信頼が求められる。以上から、女性的な価値観――開放的で権威的でない――に沿って暮らし、行動したいと願う人々にとって、バンブーザーは理想的なツールといえるだろう。

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