娘と父のマジトーク(その8)「いじめ撲滅作戦ポスターを貼りまくって、いじめがなくなるわけないじゃん」父と娘の週末トーク(2/3 ページ)

» 2014年01月10日 17時00分 公開
[シックス・アパート 中山順司,Business Media 誠]

先生が味方になってくれなかったら、もう頼れる人がいない

父: もしいじめを目撃したら、サオリはどうする? 1〜4番でどれを選ぶ?

  1. 「何やってんだ! やめねえか」って勇ましく止めに入る。
  2. 「何やってんの?」ってマイルドに入っていく。
  3. 見て見ぬフリをする。
  4. 先生にコッソリ報告をする。

娘: 2番かな。その後で先生に報告する。

父: まあ女の子だし1番はできないかな。でもさ、しゃしゃり出ると自分がいじめのターゲットになっちゃうってこともないかな?

娘: そーだねー、それは考えちゃう。いちおう女子だから、暴力を振るわれることはないだろうけど、上履きがなくなったとか、筆箱が隠されるとか、隠れたいじめがあるかも。

父: もしサオリが校長の立場だったら、どんな方法でいじめを撲滅する?

娘: うーーーん……。

父: いじめ撲滅作戦ポスターを貼りまくろうか? 劇を何回もやろうか?

娘: そんなんで、いじめがなくなるわけないじゃん(笑)。

父: 実現性は無視して考えてみよう。じゃあ、こんなのはどう? 「校長にだけ連絡できる、特別な携帯電話」を生徒全員にタダで与えよう。24時間、いじめを見たりされたりしたら、メールや電話で校長に通報できる。校長がイヤなら、カウンセラーでもいい。で、いじめの加害者は即刻退学。通報者の匿名性は厳守される。

娘: うーーーん、いきなり退学はムチャにしても、加害者が全員の先生からとっちめられるってなれば、すごく効果があるんじゃないかな。でもさ、それだけじゃいじめはなくならないと思う。

父: 何で?

娘: やっぱり、いじめられている子は、先生や親には直接言いづらいと思う。

父: 特別な携帯電話を配るだけじゃダメ?

娘: そういう問題じゃない。

父: いじめは犯罪だよ。例えば家に泥棒が入られたら、すぐ警察に通報するよね。言いづらくないよね。いじめられたら、迷わず大人に相談すればいいじゃない?

娘: それは分かるんだけどさ……。何て言うのかな、自分から言うのは抵抗あるよね。

父: じゃあ、サオリがいじめられたら、直接は言いにくい?

娘: うん。まず友達に相談する。で、友達と一緒に先生の所に行く。

父: 1人だと抵抗あるけど、友達と一緒だと、相談しやすいのね。

娘: うん。

父: その差は、何だろうね。

娘: 想像だけど、1人で相談すると真剣に相談に乗ってもらえない気がするの。「お前の勘違いじゃないのか」とか、「それくらい、当事者同士で解決しなさい」って言われちゃったら突き放された気持ちになると思うんだ。だけど友達と一緒行けば、先生だって真剣に話を聞こうとしてくれるんじゃないかな。

父: 証人が複数いるし、先生も腰を上げないわけにはいかない、ということだ。

娘: そう。勇気を出して相談しても先生が味方になってくれなかったら、もう頼れる人がいないよ。だから、勘違いじゃないし、真剣なんだって姿勢を見せるために、友達にも来てもらう。

「いじめられっ子=心の弱い人=みっともない」って気持ちになる

父: 先生に報告するということはさ、同時に親にもバレるよね。

娘: だよね。死ぬほどキツイね。

父: どっちに先に相談するのがいいのかな、親か先生か。

娘: (じっと考えて)先生かな? 親に先に伝えると、興奮して学校かいじめっ子の家に怒鳴り込みそうじゃない?

父: お父さんだって、そんな立場になったら冷静でいられる自信ないしな……。親に怒鳴り込まれて、そこで初めて先生が事実を知るってのはあんまり好ましくなさそうだね。

娘: 逆に、それでいじめがもっとひどくなってしまうかも。

父: 確かに。先生に先に相談するとして、いつ、どうやって相談する?

娘: 本当にいじめられているかどうか、確かめる。1回からかわれただけなら、スルーする。2回目でアレ? って思う。3回目でおかしいぞって思って、4回目でこりゃ確実にいじめだって判断する。

父: なるほど、何度か確認して、確信を得たら相談するんだね。

娘: でも先生には言いにくいんだよなー。

父: 確実にいじめであると確信できても? さっき言ってた、先生が真剣に聞いてくれないかもって不安があるから?

娘: それだけじゃなくて、気まずいの……。いじめられたことを大人に相談するのって「自分が弱いダメ人間だ」って認めているような気がしちゃう。

父: 自分は被害者で、何も悪いことはしていない。でも、自分が情けなくなる?

娘: うん、「いじめられっ子=心の弱い人=みっともない」って気持ちになるし、先生に弱みを握られてしまう怖さもある。

父: それが、信頼している先生であっても?

娘: 信頼できる先生なら、ギリギリ言えるかな……。

父: 普段接点の少ない学年主任や校長先生は?

娘: かなり、言いにくいね。

父: じゃあ、相談室にいるカウンセラーは?

娘: もっと言えないなー。だって、会ったこともない人で、どんな反応をされるかも分からないんだよ?

父: そういうもんか……。じゃあ相談室を設ければ、生徒が自主的に相談するだろうって思い込むのは、見込みが甘い?

娘: うん、相談したくても相談できないって生徒は実は多いかも。あと、私は男の先生には相談しにくい。できれば、女性がいい。

父: そうなんだ。男の先生のほうが、頼もしいイメージがあるのかなって思ってた。

娘: 女の子の心を理解してくれるのは、やっぱり同性だと思う

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