プロスポーツ選手の活躍を陰で支える通訳という存在臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(3/4 ページ)

» 2014年01月09日 08時00分 公開
[臼北信行Business Media 誠]

「専属チーム」のせいでチーム内から浮いてしまった松坂大輔

 逆に通訳が思わぬ「壁」を作ってしまうこともある。2007年に西武ライオンズからレッドソックスへ移籍した松坂大輔投手(現メッツからFA)のケースだ(参照記事)。松坂は専属通訳、さらには個人トレーナー、専属広報ら日本から大勢のスタッフを引き連れて入団。異国の地でも万全な体勢を整えて臨めるようにと「チーム松坂」を結成したのだが、こうした過剰なまでのバックアップ体制が結果的にマイナスとなってしまった。

 当時のチーム正捕手だったジェイソン・バリテックが「ダイスケは話をしていても、相手の目を見ない。オレはまるで通訳と会話しているみたいだ」とブツクサ言っていたのも無理はない。マウンドで松坂がバリテックとバッテリーを組みながら毎回のように呼吸が合わず四球を連発させていたのも、2人のコミュニケーションが実はうまくいってなかったのだから当たり前である。

 「松坂は監督やスタッフ、ナインとも常に通訳を通して会話していた。いわゆる『チーム松坂』の面々が常にそばにいたから、日本語だけでも彼は困らなかったのです。ところが知らず知らずのうちに、レッドソックス内で浮いた存在になっていってしまった。松坂に関してはポスティングシステムの入札金や契約金などを合わせた額が約1億ドルとも言われていただけに、ただでさえ彼は一部の選手たちからねたまれていましたからね。

 入団1年目でレッドソックスはワールドシリーズを制覇したが、シャンパンファイトで松坂のところに自らやってくる選手は皆無に等しかった。他のチームメートと写真で2ショットになっているのは、日本の報道陣が無理矢理リクエストしたからですよ」(メジャー関係者)

 自らの取り巻きによってコミュニケーション不足に陥ってしまったのだから本末転倒。とはいえ、そうした中で松坂も段々と自分がチーム内で置かれている立場に気付き、後年は「チーム松坂」を解散して専属通訳を使わず積極的に話しかけるようになっていった。それでも時すでに遅しの感は否めなかった。

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