中国には、いまや多くの高級ブランドが日本を捨て積極的に進出している。それなのに、世界第2位の経済大国を軽視するのは無謀だと思うのが普通ではないか。
だが実は、販売台数を縮小させるという決断こそが、フェラーリのブランド力を最大に引き出す秘策なのだ。
フェラーリの最大のブランド力とは、その希少性にある。つまり、欲しくてもなかなか手に入りにくいというイメージが重要になる。金さえ払えば簡単に手に入る高級品になることを許されないブランドなのだ。同社のすごいところは、まだ売り上げが好調で作れば売れるのが分かっている時期にしたことだ。
売り上げを伸ばすには、合理化や商品を大量生産して売ればいいと安易に考えがちだ。確かに一時的には数字が出るかもしれない。しかし、利益を追求し過ぎた多くのブランドが、過去に痛い失敗をしている。特に高級ブランドは、需要と供給のバランスを保つのが難しい。今でこそ業績が回復したイタリアを代表するファッションブランドのGUCCI(グッチ)ですら、かつてカジュアルなロゴ商品を大量に作り過ぎてブランドイメージを低下させてしまったことがある。
過剰な供給は消費者を落胆させかねないし、その逆でもブランドの存在感を失いかねない。その見極めができるかどうかが、高級ブランドが勝ち残る重要なポイントになる。
そして、もうひとつの成長戦略は、本社で行われたメディア向け発表会でルカ・ディ・モンテゼーモロ会長が語っている。
「フェラーリは、今後少なくとも私が実権を握っている間は、コンパクトカーやエコカーを作ることはない」
ここで言うエコカーとは、環境に配慮した電気自動車を指す。多種多様なモデルを市場に導入して顧客層の拡大を狙う他社とは一線を引く、大胆な戦略だ。自分たちのプロダクトに絶対的な自信を持ち、ブレない心意気には尊敬する。
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