中国で、非営利団体はうさん臭い?女神的リーダーシップ(3/4 ページ)

» 2014年01月02日 17時50分 公開
[ジョン・ガーズマ、マイケル・ダントニオ,Business Media 誠]

1人っ子たちの「根無し草」不安

 1人っ子政策の影響でランに兄弟姉妹はなく、それだけに両親の愛情や期待がいっそう強いのかもしれない。ランの両親は同世代の人々と同じく、ある種の世代間ギャップに苦しんでいる。若年成人世代は教育水準が高く物怖じしないため、政治や世の中の出来事について年長者の意見にも臆せず反論し、物質的な生活水準の向上にとどまらない多様な夢を持っている。

 「両親は、善き市民を自任しています」とランは語る。共産主義革命の申し子である2人は、毛沢東の言葉や方針をことあるごとに思い起こしていたという。「政府の発表に注意深く耳を傾けます。善良で、羽目を外したりはしません」。ではランの世代はどうだろうか。「私たちの世代が毛沢東の名前を口にするのは、ジョークを言うときだけですね。私が考える善き市民とは、同胞に手を差し伸べる人々です。社会意識を持ち、変化をもたらすために決断できる人々です」。

 もう少し具体的に言うと、「有意義な社会的課題に目を留め、少しの勇気を奮い起こして『解決策は見つかるはずだ』と言葉に出すことができる人々」である。収入の多寡を気にかけないランの姿勢に両親は戸惑っているという。「ですが、『この仕事をしていると幸せなの』と父母を説得しています。自分の力で世の中を変えられるのですから。それがわたしの望む人生なのです」。

 ランがキャリア目標を社会貢献と関連づけて考えるようになったのは、上海財経大学でスティーブ・クーンの講義を受けてからである。クーンはハーバード大学ケネディ・スクールで社会的企業について学び、中国を拠点にしてアジアの社会起業家に助言していた。2008年には、事業活動をとおして地域社会を発展させる可能性をテーマに、中国各地で講演を行った。

 これから社会に出ようとする若年成人たちに、彼はこう語りかける。「従来の慈善家は、どれだけ多くの人を助けたかを誇ります。これに対して社会起業家は、支援を必要とする人々があとどれだけいるかを考え、みずからの責任を思い起こすのです。世界はもっと多くの社会起業家を必要としています」。ランは「使命を柱とした事業」というクーンのメッセージに強い感銘を受けて、自分の進むべき道を考えるうえでの指針とした。

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