中国で、非営利団体はうさん臭い?女神的リーダーシップ(2/4 ページ)

» 2014年01月02日 17時50分 公開
[ジョン・ガーズマ、マイケル・ダントニオ,Business Media 誠]

 実際に問題に取り組もうとすると、中国ならではの障壁が浮き彫りになった。この国では、大きな目的を追求して信用されるのは、政府と民間企業だけなのである。事実、中国では非営利団体は皆無に近く、当局には非営利団体の行いを理解、信頼する素地はなかった。フラディンは、この問題を克服するためにグリーノベイトを慈善組織ではなく企業にした。フラディンと同僚たちは政府の規制をかいくぐり、啓発、助言、情報提供などを行う環境保護組織として活動している。政府助成などを受けないかぎりは、厄介な監視に晒されずに公益の増進に努めることができる。

 フローラ・ランは、私たちと一緒に上海の住宅街にある事務所に向かいながら、グリーノベイトについて語ってくれた。事務所のある小路に入ると、頭上には洗濯物がはためき、少し離れたところからは子どもたちの声が響いていた。2階建ての建物に入居する事務所には誰もいなかった。しかし、家族と遠く離れて暮らすランは、休日だからといって気軽に帰省するわけにいかず、事務所で私たちの取材に快く応じたのだった。彼女は社会起業家がどういった理念を持っているか、社会から受け入れられるためにどんな努力が求められるかを話してくれた。ランは自立も社会起業家の理念の1つだという。

 「強大な政府と関わっていると、自分たちも強大だと勘違いしてしまいます」。政府の提供するサービスの利用を通じて、ビジネスマンや消費者はおのずと政府のようなものの見方をするようになり、グリーノベイトをうさん臭い目で見るようになりかねないという。グリーノベイトの真の目的は何かとか、情報漏えいは大丈夫かといった心配をするのだと。

 グリーノベイトの顧客は、炭素排出量の多いメーカーや、ヘルシーで環境にも優しい料理を供したいと考える小さなレストランのシェフなど、さまざまである。ランは顧客と仕事をする際にまず、燃料、電力、水などの消費状況を確かめる。同僚ともども廃棄物の流れや製品の安全性も監視する。これらの確認作業が完了すると顧客企業のマネジャーに報告書を提出し、技術や業務手法の改善状況に目配りしたり、従業員に研修をほどこしたりする。

 ランにとって、グリーノベイトで働くことは給料をもらう以上の意味を持つ。社会起業家としての道を歩みながら、「収入を手に入れたうえで、幸せも手に入れられるのです」。収入は決して多くなく、特に、大企業に就職した上海財経大学の同級生とはかなりの開きがある。彼女はこの日が誕生日だったのだが、故郷で両親と一緒に祝えない寂しさでちょっぴりしんみりしていた。そこへ、両親からの小さな贈り物が詰まった小包が配達されてくると、笑顔になり、普通と違う職業を選んだ自分を両親は受け入れてくれていると誇らしげに語った。

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