中国で、非営利団体はうさん臭い?女神的リーダーシップ(1/4 ページ)

» 2014年01月02日 17時50分 公開
[ジョン・ガーズマ、マイケル・ダントニオ,Business Media 誠]

集中連載「女神的リーダーシップ」について

 本連載は、ジョン・ガーズマ+マイケル・ダントニオ著、書籍『女神的リーダーシップ』(プレジデント社)から一部抜粋、編集しています。

「世界を変えるのは、女性と“女性のように考える”男性である!」

ギリシア神話の女神アテナは、文化文明と芸術工芸の守護神であり、戦いの神としての顔も持つ、武力ではなく知恵によって人々に勝利をもたらす。

世界13カ国、6万4000人を対象にした調査から明らかになった、理想のリーダー像とは? 世界で成功している起業家、リーダーが示す特徴の多くは、思想や宗教、文化に関係なく「誠実」「利他的」「共感力がある」「表現力豊か」「忍耐強い」など、一般に「女性的」といわれる資質であることが浮彫となった。

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 2012年のメーデー当日、中国人の大多数が休日を祝うなか、フローラ・ランは私たちの取材を受け、環境保護を推進しながら利益を上げるエンジニア、デザイナー、マーケター、教育者らの活動について語ってくれた。中国といえば毒入りハミガキや産業公害を思い浮かべる人も多いだろう。ランが勤務するグリーノベイト(Greenovate)のビジネスモデルも人によっては怪しげだと感じるかもしれない。しかしグリーノベイトは、労働慣行や環境対応の国際基準を満たしながら環境に優しい製品やサービスを提供する方法を中国企業に伝授して、利益を上げている。

 近年、中国共産党が政策上の優先課題の見直しを行ったことはグリーノベイトには追い風となった。ほぼ30年にわたる怒涛(どとう)のような経済成長を経て、政府高官は経済発展だけでなく、一般市民の生活の質をも重視するようになった。「中国のデトロイト」とも呼ばれる広州では、市当局が市内を走る車の半減に向けて取り組んでいる。全国でも、交通量を減らして大気汚染を和らげるために、似たような政策が実施されようとしている。各自治体はまた、公共交通機関、公園、文化センターなどに大規模な投資をしている。これらの施策は社会福祉の向上を目的とするほか、環境運動が広がりつつある状況への対応とも見られている(2011年には公害をまき散らす工場への街頭抗議が起きた)。

 グリーノベイトは、環境への関心の高まりという好機を捉えるために、ミヘラ・フラディンというスロベニア人が設立した企業だ。フラディンは最初、重工業向けにエンジニアリングを行う欧州企業の職員として中国にやってきた。そして、この国では文化の混乱と環境問題への理解不足のせいで、仕事がやりにくくなっていると感じた。あるインタビューでフラディンはこう述べている。「何度も同じ問題にぶつかりました。みんな、『森林資源は有限だから、カネさえ出せば材木を買えるわけではない』ということを知らないか、教わっていないのです。河川の汚染は1週間で解消するわけではありません。私は、工場のオーナーたちと一緒に仕事をしながら確信したのです。彼らが、自分たちの仕事が環境にどんな影響を与えるかを大きな視点で捉えていたら、いままでのようなやり方をつづけるはずがないとね」。

 フラディンは勤務先のプロジェクトが完了した後も中国にとどまり、グリーノベイトを設立した。同じ時期にウォルマートやアップルが、環境や労働分野の国際基準を満たすよう納入業者に強く要請するようになった。これと相前後して、中国各地で環境汚染への抗議活動が起きるようになった。政府が容認姿勢を示したことで環境保護の気運がいっそう高まり、中国を暮らしやすい国にするには空気、水、土地をどう保護すべきかという議論が沸き起こった。

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