中国で“成功の定義”が変わり始めている――どのように?女神的リーダーシップ(4/4 ページ)

» 2013年12月31日 08時25分 公開
[ジョン・ガーズマ、マイケル・ダントニオ,Business Media 誠]
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 中国の若年成人層は1人っ子が多く、年長者への大きな恩義とその世話への不安を感じているが、資金やノウハウを提供すれば、彼らの不安はいくらかでも和らぐだろう。「両親そして場合によっては2組の祖父母の世話がのしかかってきそうな人にとって、新たな挑戦に乗り出すのは大きな賭けでしょう」とチンは言う。イノベーションの担い手になりそうな人々であっても、励ましや資金提供が得られなければ、先駆者になるよりも、大企業での安定したキャリアを選ぶ可能性が高いだろう。だが、支援があれば、中国、ひいては世界をよりよくするアイデアを追求できるはずだ――このように考えるチンは、教育、医療、治安、食の安全、環境に優しい技術などの分野に機会があると見ている。

 チンが着眼する事業分野では例外なく政府介入が弱まり、利益追求企業に市場が開放されたが、これはリーダーシップ不在の状況をも生んだという。「この国は、統制経済から自由市場経済へ、国有財産から私有財産へと軸足を移してきました」。最近では、政府は文化統制も弱め、個人と社会に目指すべき理念を押し付けるのを控えている。「30〜40年前であれば、政府が理念を示していました」。今日では、道徳、社会、商取引の理念を国民がみずから決めることができる。「草の根レベルで理念の変化が加速しているのです」。この変化は社会的事業の発展にも映し出されており、中国の歴史上で初めて、慈善事業や民間の奉仕団体が生まれてきている。

(つづく)

著者プロフィール:

John Gerzema(ジョン・ガーズマ)

消費者行動が経済成長、イノベーション、企業戦略に与える影響を分析する社会理論家。グローバル企業のコンサルタントとして、消費者の価値観やニーズの変化を膨大なデータ分析によって追跡調査している。前著『スペンド・シフト』は、ビジネス雑誌、ファストカンパニーの「ベストビジネス書2010」に選出され、北米で出版されたビジネス書を対象としたAxiomビジネスブックアワードで2012年の金賞を受賞。

コロンビア大学、MITスローンスクールなどで講師を務め、TEDでのスピーチは25万人に視聴されている。BAVコンサルティングのエグゼクティブ・チェアマン、世界50カ国、5万ブランドを対象とした世界最大の消費者調査、BrandAssetValuator(BAV)の責任者を務める。


Michael D'Antonio(マイケル・ダントニオ)

ピュリツァー賞受賞ジャーナリスト。ビジネス、サイエンス、スポーツと多岐にわたるジャンルで15冊を超える本を執筆。チョコレート王を描いたHershey(未訳)はビジネスウィークの年間ベスト書の1冊に選ばれた。ノンフィクション映画、Crown Hightsの脚本で、人間の尊厳や自由を訴える優れた作品に贈られるヒューマニタス賞を受賞。


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