中国で“成功の定義”が変わり始めている――どのように?女神的リーダーシップ(2/4 ページ)

» 2013年12月31日 08時25分 公開
[ジョン・ガーズマ、マイケル・ダントニオ,Business Media 誠]

 初めて中国を訪れる欧米人にとって、経験と見識を兼ね備えた人物から、敬意と配慮のもとで中国を紹介してもらえるのはとてもありがたい。私たちの友人PTは、ソートフル・メディアという会社の幹部として、現代中国の文化と社会の本質を探り出して理解することに注力している。彼は学生時代からずっと、庶民から指導者まで、中国のあらゆる層で起こっていることを知ろうと熱心に努めてきた。いまでは中国の指導者や一般市民がその時々で何を考えているのか、ジャーナリスト、政府高官、実業家などから頻繁に質問される立場である。

 PTは、上海の旧フランス租界にある垢抜けた自宅アパートでわたしたちの取材に応じ、「中国の創造性は凄まじいものです」と話してくれた。その創造性は、1986年に共産党が「開放」政策を導入して商取引の統制を緩めて以来、事業活動が爆発的に拡大してきた様子にも表れている。とはいえ、PTによれば、25年に及ぶ経済の活況を経て、中国における成功の定義は変わり始めているという。野心や意欲を持った人々は、富や社会的地位の追求では飽き足らず、「よりよい暮らしを創造している」という実感を得たいと考えるようになった。他の専門家も指摘してきたように、中国の人々は何らかの精神的充足を渇望しているようだ。具体的には、他者とのつながりや奉仕、あるいはもしかしたら、共産主義化する以前の価値観の復活を望んでいるのかもしれない。中国人は、組織的な政治活動に乗り出すよりも、主に自分1人でこれらを追求する。

 「10年前には、誰もが政治や民主主義を話題にしたように思いますが、最近は違います」とPTは言う。彼はいま、中国人は米国のテロとの戦いを見て「民主主義の危うさ」を考える一方、経済的発展を受けて自国への誇りを強めたという見方をしている。人々はこのような状況を念頭に置いて、中国ならではの自由、繁栄、安全を実現するための「長期的展望に立った創造的なアイデア」を探っている。

 PTが言葉をつづける。「中国人は、有史以来、最も成功した民族なのです。中国は多文化、多言語の国がいくつも集まってできた帝国のようなもので、全体をまとめる中央政府の力により、20年間で6億人が貧困から脱しました。歴史上、これほど短期間にこれほど多くの人を貧困から救った政府が、果たしてほかにあるでしょうか。こうした視点に立つなら、中国人には、自分、市場、国の進歩や発展を重んじ、『自分はそのために大きく貢献できる』と信じる理由がいくつもあるはずですよね」。

 PT・ブラックによる外国人への最良のアドバイスは、長年の思い込みを捨てて、世界最大で最古の社会が持つ可能性の広さと深さに目を向けるようにということに尽きる。そうすれば、中国は状況が刻々と変化していて、創造性溢れる人々が自主性の発揮対象を見つけることができる地だと分かってくるだろう。

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