2014年3月30日、羽田空港の国際線発着枠が増加される。国内航空会社向けに追加された16枠のうち3分の2を占める11枠を獲得した全日本空輸(ANA)は、現時点で7つの新規就航路線と3つの増便路線を発表する一方で、成田発の一部の欧州便を運休、減便するとも発表している。同社の「2014年サマーダイヤ 国際線路便計画」から、羽田発着の国際線に注力するANAの狙いを読み解いてみよう。
新規開設は、欧州3路線(ロンドン、パリ、ミュンヘン)、北米1路線(バンクーバー)、アジア3路線(ジャカルタ、ハノイ、マニラ)だ。また、利便性の高い昼間の発着便は増便も含めれば現行の5路線8便から15路線18便へと大幅に増加する。
2013年ウインターダイヤ | 2014年サマーダイヤ(2014年3月30日~) | |||
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昼間時間帯 | 路線 | 便数 | 路線 | 便数 |
ソウル(金浦) | 3 | ソウル(金浦) | 3 | |
北京 | 1 | 北京 | 1 | |
上海(虹橋) | 1 | 上海(虹橋) | 1 | |
香港 | 1 | 香港 | 1 | |
台北(松山) | 2 | 台北(松山) | 2 | |
ロンドン | 1(新規) | |||
パリ | 1(新規) | |||
シンガポール | 1(増便) | |||
バンコク | 1(増便) | |||
フランクフルト | 1(増便) | |||
ミュンヘン | 1(新規) | |||
ハノイ | 1(新規) | |||
ジャカルタ | 1(新規) | |||
マニラ | 1(新規) | |||
バンクーバー | 1(新規) | |||
小計 | 5路線8便 | 15路線18便 | ||
深夜早朝時間帯 | 路線 | 便数 | 路線 | 便数 |
ロサンゼルス | 1 | ロサンゼルス | 1 | |
フランクフルト | 1 | フランクフルト | 1 | |
シンガポール | 1 | シンガポール | 1 | |
バンコク | 1 | バンコク | 1 | |
ホノルル | 1 | ホノルル | 1 | |
小計 | 5路線5便 | 5路線5便 | ||
成田空港と比べると羽田空港には都心部からの交通アクセスの良さ、国内線との乗り継ぎによる日本各地からの接続性の良さなどのアドバンテージがある。今回の大増便、ANAは「羽田最大の国際線ネットワークキャリア」(同社)となったことの優位性を生かして、首都圏発着のビジネス需要ならびに地方発着需要をさらに獲得しようとしている。
また、日本各地から韓国の仁川国際空港(ソウル)を経由して海外へ渡航していた旅客に対しては、すでに国内線ネットワークが充実した羽田空港をハブ空港とする新たな利便性の提供も期待できる。また、成田空港から海外に出発していた利用者に対しても、羽田-成田間の地上移動を省いたスムーズな乗り継ぎをアピールしていくだろう。
さらに12月20日には、日本を訪れた外国人客数が初めて年間1000万人の大台に到達した。2020年には東京でのオリンピック開催も控えており、訪日需要はさらなる拡大が期待できる。今後、日本の魅力を世界の人々に発信する取り組みは増えるだろう。そのとき、羽田空港が日本各地への訪日外国人旅行者の玄関口となっているかもしれない。
もう1つ、2014年サマーダイヤの設定で特徴的なのはアジア路線の充実だ。先に挙げたハノイ(ベトナム)への乗り入れはANAとして初めて(同国ホーチミンへは成田発着便が存在する)。また、フィリピンのマニラへの便も成田発着便に続く2路線目となる。さらに羽田とシンガポールやバンコクをつなぐ路線もそれぞれ増便だ。
ANAの担当者によれば、「特にアジアとの間では、朝早くに羽田を出発し、夜遅くに羽田に到着する便を増発し、現地滞在時間をなるべく長くできるようなダイヤを組んだ。首都圏西部在住の利用者にとって、成田を朝9時前に出発する便、成田に21時以降に到着する便は空港アクセスの面で使い勝手が良いとはいえないが、羽田であれば広く首都圏の利用者に支持されるだろう」という。例えばハノイ線の場合、羽田を8時55分に出発しハノイには12時5分に到着し、折り返しとなるハノイ発は14時で羽田には21時5分に到着する。
アジアの各都市をつなぐ羽田発着便の増加の背景には、首都圏発着便による単純な利用者増に加えて、成田や羽田を経由したアジア-北米間の旅客需要など、成長するアジアの流動を取り込もうという意図がみえる。ANAグループの持ち株会社であるANAホールディングスも成長するアジアの需要を取り込むべく、アジアへの戦略的投資などを実施してきた。
ANAは拡大した発着枠をビジネス需要が見込める路線の拡充に振り分けたといえる。都心からのアクセスが容易な羽田空港から、それも使いやすい昼間の時間帯における発着便の増加は、ビジネスパーソンにとってありがたい。また、国内線との羽田乗り継ぎの選択肢も増え、国内各地からの海外渡航も身近になることだろう。
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