「餃子の王将」社長はなぜ「25口径」で撃たれたのか?窪田順生の時事日想(1/3 ページ)

» 2013年12月24日 07時00分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

窪田順生氏のプロフィール:

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。


 「餃子の王将」の大東(おおひがし)隆行社長が本社前で射殺された日の晩、たまたま某広域暴力団幹部からカタギに転じた方たちと飲んでいた。

 杯を重ねていくうち、こちらが振ったわけでもなく自然に話題は今朝の事件へ。毎日のように抗争事件が報じられ、日本中が震え上がっていたあの時代を生き抜いたヤクザとして、やはりチャカを使った人の殺め方には一家言をもっているようで、思い思いの“見立”を披露してくれた。なかには、「いろいろ聞いているけど、今は言えねえなあ」なんていかにもヤクザらしい含みのある言い方をしたり、さる組織の関与をほのめかしたり。そのなかで興味深かったのは、こんな読みである。

 「ヤクザで殺しが目的なら確実に仕留められる38口径を使う。22口径(この時点では22口径という情報が流れていた)なんて使わない。だが、手口からして素人とも思えない。ってことは、あえて殺傷能力の低い銃を使ったのは、即死ではなくて痛みでのたうちまわるなかで、じわじわと殺したかったのかもしれない」

 なんとも残酷な発想だが、実際に銃撃犯が使用したのが「25口径」だと確定したことで、さもありなんな話だと感じた。

 「25口径」はいわゆる護身用の小型銃に多い。分かりやすく言えば、「ルパン三世」の峰不二子が内股にしまい込んでいる例のアレだ。この銃で初めから確信犯的に人を殺めようとなると、かなり腕に覚えがなくてはならない。

 昔、國松長官銃撃事件※を取材した時、いろいろな専門家たちにお話を聞いたところ、共通していたのは、どんなに訓練を受けた者でも動く標的に当てるというのは意外に難しく、確実に絶命させるためには2メートルくらいまで近づかなくてはいけないということだった。

※1995年3月に日本の警察庁長官・國松孝次氏が何者かに狙撃された事件。2010年3月に殺人未遂罪の公訴時効(15年)を迎えた。
王将フードサービスの公式Webサイトには、大東社長のあいさつ文が掲載されている(12月23日時点)
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.