安倍政権が最重要視する“中国包囲網”、成功のカギは?藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2013年12月18日 07時30分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 2013年を振り返ると、日本が外交で最も注力したのは対ASEAN(東南アジア諸国連合)外交だった。年が明けて間もなく、麻生太郎副総理がミャンマーに行き、安倍晋三首相は、就任して1年も経たないうちにASEAN10カ国をすべて訪問した。

 その締めくくりとして12月14日、日本・ASEAN特別首脳会議が東京で開かれた。日本とASEANが公式に関係を結んでから40周年にあたるというのがこの活発な外交の背景にあるが、それだけではない。かつて、ASEANという地域がこれほど日本にとって重要になったことがないからだ。

 「日本は人口が減っていく社会」――安倍首相はアベノミクス第3の矢として日本の成長戦略を掲げるが、人口の減少とともに国内の消費や需要は減少するので難しい。そのため、日本にとって、需要や消費が見込まれる周辺諸国とどうWIN-WINの関係を作り上げるかが重要な国家戦略になる。

photo 12月14日、日本・ASEAN特別首脳会議が東京で開かれた(出典:首相官邸HP)

 しかし最大の隣国である中国との関係は、2012年秋に民主党野田政権が尖閣諸島を国有化して以来、冷え込んだままだ。それどころか、中国はその問題を契機に日本に対する圧力を強めており、最近では中国として初めて防空識別圏を設定した。そこには日本の領土である尖閣諸島の上空も含まれているが、そのことについて日本に事前説明がなかった。ここまで冷え込んだ関係が、早期に改善する見込みはほぼないと言ってもいい。

photo ASEAN加盟国は10カ国。経済発展の水準はバラバラといえる(出典:首相官邸HP)

 そのような状況下で、日本にとってASEANは重要な存在になっている。ASEAN諸国は2015年をめどに経済共同体を発足させようとしているが、人口が6億人を超えるような共同体ができれば、日本にとって大きなチャンスだ。2万を超える日本企業が中国に進出してきたが、人件費の高騰や政治的リスクなどを考えれば、今後はほかの国に活路を求めなければならない。ASEANに進出した日本企業はまだ6000社前後だ。まだまだ開拓余地がある。

 ASEAN加盟国は10カ国もあり、経済発展の水準はバラバラだ。シンガポールのように先行した国もあれば、ミャンマーのように政治的な問題を乗り越えて、これから経済発展に取り組む国もある。電力のような重要なインフラですら十分に整っていないところも多い。企業だけでなく政府援助も組み合わせることが、円滑な進出のカギとなるだろう。

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