宮城、福島を訪れた人はいずこへ? 位置情報データが教えてくれたこと仕事をしたら“人の移動”が見えてきた(後編)(2/4 ページ)

» 2013年12月18日 07時37分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

松島の課題

「おでかけ研究所」の主席研究員・長谷部潤さん

土肥: 松島には課題がないわけですね。では、次に……。

長谷部: いえ、課題が全くないわけではありません。松島を訪れた観光客は、なかなか松島に泊まってくれません。泊まっているのは13.0%ですね。多くの観光客は16時ごろには松島を離れ、仙台に行ってしまう。ちなみに仙台に宿泊する人は31.0%。

土肥: 前編でも紹介しましたが、岩手県の平泉を訪れた人も仙台で泊まる傾向がありました。やはり、仙台の夜は魅力なわけですね(笑)。

 ただ宮城県全体で考えると、“損”な話ではないですよね。松島には泊まってくれないかもしれませんが、同じ県内の仙台に泊まってくれるので、観光客のお金はそこで落ちる。

長谷部: 先ほども申し上げましたが、松島は沿岸部への周遊拠点として位置付けられます。なので松島に泊まってもらうと、次の日に「石巻に行って、気仙沼で泊まろう」といった人が増えてくるんですよ。しかし現状は、仙台に戻ってしまう人が多いので、「石巻には行かなくてもいいや」となってしまうんです。

 松島の魅力を高めて、観光客の滞在時間を長くすることができれば、宿泊につながり、沿岸部への周遊にもつながるはず。お店を夜遅くまで開けてもらうなどして、ホスピタリティを高めることが必要かもしれませんね。

土肥: なるほど。

長谷部: あと、ちょっぴり「えっ」と思ったデータが出てきました。宮城県を訪れる観光客は鉄道を利用している人が多いと思っていたのですが、実はそうではなく、クルマで来ている人のほうが多いんですよ。

 宮城県は、これまで鉄道客へのプロモーション活動で大きな成果を挙げてきましたが、今回の調査で、ほぼすべての観光エリアで高速道路を利用する人が多いことが分かってきました。今後は高速道路を運営するNEXCO東日本ともいろいろなことを進めていったほうがいいでしょうね。こちらにも集客のヒントが隠されていると思います。

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