湿布薬でグッドデザイン賞?――久光製薬(1/2 ページ)

» 2013年12月17日 15時00分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]

 先日、肩と腕の筋を傷めてしまい、病院へ行くことになった。医師から処方されたのは、飲み薬の痛み止めと、モーラステープという貼り薬。かなり痛かったので薬はまじめに飲もうと思ったのだが、正直「ちょっとイヤだなぁ」と思ったのが貼り薬だ。

 イヤだった理由は2つある。1つは、テープを貼っているのがほかの人から見えると、湿布を貼っているようで恥ずかしいから。もう1つは、痛いのが首から肩にかけてと腕の裏側のところで、一人で貼るのが難しい場所だからだ。お恥ずかしながら私はかなり不器用で、昔から貼り薬を自分で貼ろうとすると3回に2回は失敗してしまう。まっすぐ貼れなかったり、はく離紙をはがしたところがくっついたりクシャクシャになったりしてしまうのだ。特に粘着性の高いテープ系貼り薬の場合は、うっかりくっついてしまうとはがしたところが変な風に伸びてしまってきれいに貼れない。そんなわけで、処方されたモーラステープは数日間、貼らずに薬局の袋に入ったままだった。

貼りやすくて、はがれにくい

 病院に行った数日後の朝のこと。筋の痛みがあまりにひどくて我慢できず、あきらめてモーラステープを貼ることにした。貼っているのが見えないように、首元があまり開いていない服を着れば、きれいに貼れなくてもめだたないだろう……という作戦だ。

 モーラステープから、はく離紙をはがそうとして「アレ?」と思った。ふつう貼り薬といえば四角いものを1枚ペロンと隅からはがしていくものと思っていたのだが、違うのだ。貼り薬の真ん中に2本波形の線が入っており、ここを山折りにして先にはがす。はがした中央の部分を患部に貼り付けて固定し、残りの両脇をはがす……と図解してある。

病院で処方されたモーラステープ。1、2、3と図の通りにはがすときれいに貼れる

 この通りに貼ると、確かに失敗しない。先に真ん中を固定できるので、自分では手が届きにくい肩甲骨のあたりや腕の裏側も、きれいに貼れるのだ。おお、これは便利!

 1日モーラステープを貼ったまま過ごして家に戻り、夜、はがして捨てそうとして気がついた。通常、貼り薬は角の部分からだんだんめくれるようにはがれていってしまうのに、モーラステープは全然はがれていない。夜になっても貼ったときのまま。これにはちょっとびっくりしてしまった。

 ささいなことではあるが、知らない間に貼り薬も進化していたのだなあ、これも一種のユーザーインタフェース改善なのかも……などと思っていたら、面白いニュースに出くわした。久光製薬がテープ剤と湿布薬でグッドデザイン賞を取ったというのだ。

テープ剤「フェイタス」でグッドデザイン賞がとれた理由

グッドデザイン賞

 同社が11月12日に出したプレスリリースを見ると、「フェイタス」というテープ剤と、「のびのびサロンシップ」「フェイタスシップ」という湿布薬でそれぞれ2013年のグッドデザイン賞を受賞している。

 私がまず気になったのは、テープ剤「フェイタス」のプレスリリース。本文を読むと、“フェイタス(テープ剤)は、お客様の年齢層や男女差を問わず、誰にでもわかりやすく、簡単に使用することができる製品として、剥がしやすいデザインや肌が痛くならない切り口の採用など、お客様の視点に立った商品開発に取り組んで参りました。それに対して今回、グッドデザイン賞では特に「製剤フィルムのはがしやすさや、患部に貼りやすい工夫」など、『使いやすさ』が実現されている点が高く評価されました。”とある。

久光製薬のテープ剤「フェイタス」
フェイタスのグッドデザイン賞受賞理由。私がモーラステープに感心したポイントと完全に一致

 「私がもらった貼り薬と同じだ!」と思って手元にあったモーラステープを見てみると、やはり「製造販売元 久光製薬株式会社」という文字が。フェイタスとまったく同じだ。私が感心していた貼りやすい仕掛けは「波形3ピースフィルム」というらしい。

 久光製薬によれば、テープ剤(水分を含まない貼り薬)は柔らかく、貼った時のフィット性が非常に良い半面、貼り薬自体のコシが弱いため貼りにくく、「痛みのある患部からずれることなく、きれいに貼れる」ということが課題だったという。

 「波形3ピースフィルムは、中央部を先に剥がすことで患部にぴったりと貼りつけ、さらに両サイドのフィルムを一枚ずつはがすことにより、しわがなく、きれいに貼ることを実現しました。また、波形フィルムも、手でつまみやすい適度な波形の高さ、しわが寄りにくい波型の幅など、十数パターンの形状でミリ単位の試行錯誤を重ね、お客様にとって非常に使いやすい形状に仕上げております」(久光製薬)

 今回、フェイタスがグッドデザイン賞を受賞した理由は「製剤フィルムのはがしやすさや、患部に貼りやすい工夫など、使いやすさが実現されている点が高く評価された」からだという。私が感心したのとまったく同じポイントだ。テープ剤を患部にきれいに貼れないのは、私だけではなかったということか……。

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