1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。
ちょっと前、某テレビ局の報道番組から頼まれて、未公開株詐欺の取材に協力したことがある。
具体的には既知の詐欺グループ関係者をホテルの一室へ来てもらい、テレビカメラの前でいろいろな話をしてもらった。「警視庁24時」なんかでもおなじみのモザイクがかかった犯罪者が、ボイスチェンジャーを使った奇妙な声で告白する例のアレだ。
その撮影時、ディレクターが詐欺グループ側にこんな質問を投げかけた。
「なぜ高齢者を標的にするのでしょうか? お年寄りからおカネをだまし取って悪いとか思わないんでしょうか?」
違法ビジネスに手を染める者というのは、「本当はいけないことだけど、食っていくためには仕方がない」などと良心の呵責(かしゃく)に苛(さいな)まれながら仕事をしているわけではない。
もちろん詐欺も然りである。カネがあって、ダマされやすい人々の情報が羅列された名簿が裏マーケットで流通しており、詐欺のマニュアルをつくる者がいて、電話をかける役割の者たちは機械的に“営業電話”をかける。別になにか深い考えがあって「標的」を決めているわけでもないし、被害者に対して特別な感情もない。
だから、質問された詐欺グループ側も答えに窮しており、しばらく考えてようやくこんなことを言い出した。
「そうですねえ……そこにおカネがあるからで特に悪いとかは考えてないです」
この言葉からも分かるように、ダマす側は驚くほど“罪の意識”に乏しい。もちろん非合法なことに手を染めているという自覚はあるものの、自分のパートを受け持っているだけなので、自分自身が老人からカネをぶんどっているという感覚がない。つまり、分業していることで罪悪感も薄められているのだ。
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