「クルマを使ったプロモーションが刺さらない」――レクサスがたどりついた結論とは?プレミアムブランドの育て方(5/5 ページ)

» 2013年12月13日 09時00分 公開
[岡田大助,Business Media 誠]
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ミラノ サローネで高評価を得たインスタレーション

岡田: 海外では、デザイン界の大イベント「ミラノ サローネ」に4年ぶりに出展したインスタレーションが話題になったそうですね。写真を拝見したのですが……、すみません、ちょっと何を表現しているのか分かりませんでした。

amazing flow amazing flow

河辺: ははは、確かに「これが何でレクサスなの?」といわれると、非常に難しい(笑)。以前は「クルマ」を中心に据えて、コンセプトカーなどをデザイナーに飾らせていました。でも、今年は「レクサスのあるべき姿」、つまり本質的なライフスタイルを提供するブランドとしてのあるべき姿を表現してもらおうと、新進気鋭の建築家である平田晃久さん(参照リンク)に託しました。

 インターセクトと同様、われわれは次世代を担っていくクリエイターと一緒になって新しいものを考えていきたいと思っています。今回、世界的に評価の高い建築家である伊東豊雄さんに監修をしてもらったのですが、「自分は次世代の若手を育成する側にまわるべきだ」と推薦されたのが平田さんです。

 「amazing flow」という作品では、自然や人間にかかわる「流れ」に着目して、その空間を体験した人のさまざまな感覚によって未来都市のあり方を想像してもらいました。八百万の神といいますか、世界に水がぴちょんと垂れ、土の上を水が走り、それが集まって川になり、その周りに人が集まり、文化が栄え、そしてクルマが走り出す。人口の増加とともに土地が足りなくなってくる。だから将来の都市計画というのはもっと3次元的であってもおかしくないよね、ということなのですが……。

 非常に哲学的な試みですが、ミラノサローネの会期前にイタリアの新聞で発表される「みるべきトップ10インスタレーション」に選ばれましたし、オランダのデザイン専門誌でも第2位という高い評価をいただけました。

 今の時代は「エクスクルーシブ(独占的)」であることより「開かれている」ことが重要です。お互いに胸襟を開いて語り合うことで、「レクサスがやりたいこと」をデザイナーが感じ取って、それを返してくれる。平田さんがこれまで表現したくても外に出すことができずに頭の中に溜めていたものがバッと外に出てきたときに、「ああ、レクサスのやりたいことを平田さんの表現で語ってくれたな」と思いましたね。

岡田: ミラノ サローネでのインスタレーション以外にも、デザインコンテストの「LEXUS DESIGN AWARD」や、世界5地域の若手監督5人によるショートフィルム製作「LEXUS SHORT FILMS」といった活動をされていると聞きます。

LEXUS DESIGN AWARD LEXUS DESIGN AWARDの作品

池辺: ご存じのように、若い人のクルマ離れがいわれています。欧州などでも、クルマは所有する時代からシェアする時代に入り始めています。でも、そのような考え方が常識になっていく中でも、クルマメーカーとしてはもう1度、クルマ所有することの喜びを感じてもらえなければ生き残れません。そのためにはクルマ自体の良さだけをアピールしても届かないのです。

 では、どうするのか? そこで、ユーザーとブランドが一緒に共有できる価値観というものが非常に大事なものになります。こういう時代の要請もあって「モノの価値」を見直す岐路に立っていたといえるでしょう。レクサスは、お客さまと「今までと違う価値って何だろう?」を一緒に考えられるブランドであり続けたいのです。そして、いつかは「トヨタ自動車の」という修飾語が抜けて、「レクサス」だけでみなさんに分かってもらえるようになりたいなと思っています。

Steps プロモーション動画「Amazing in Motion - Steps」で使った3メートル級のパペット
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