吉岡: 今までの説明でいくと、女性に限らず、多様な人材を生かしている会社、働きやすい制度が整っている会社が「ホワイト企業」であり「ダイバーシティ企業」だということになると思います。ただ、会社として成長していく見込みがある、有望株だということと、ホワイト企業であることとは必ずしもイコールではないようにも見えるのですが。
坂本: まず、日本経済にとって女性活躍の意義について説明させてください。日本では、約6割の女性が第1子の出産時で会社をやめてしまう、という現実があります。そのため年代別の就業率の推移をグラフにすると、30代前半に就業率が落ち、その後40代後半になると再び上昇する、いわゆる「M字カーブ」の形になっています。M字の2つ目の山で就職する場合も、ほとんどが非正規での再就職です。
先進国の中でM字カーブになっているのは日本と韓国くらい。他の国では谷がなく、フラットな台形になっているところが多いです。
吉岡: 出産後も働き続ける女性が増えれば、世帯ごとに見たときに合計収入が増えるので、経済の活性化につながりそうですね。
坂本: そうです。約300万人の女性の潜在労働力が就労し、M字カーブが解消した場合、雇用者報酬総額(従業員が働いて、給料としてもらうお金の総額)は7兆円増えるという試算があります。これは、GDPの約1.5%の増加です。国際的にも、経済社会への女性の参画が進んでいる国ほど、競争力や所得(1人あたりのGDP)が上昇する傾向があります。日本経済を再生するためには、女性の就労促進は非常に重要な課題という認識は広く共有されています。
吉岡: 実際に、女性活用が進んでいる企業、ホワイト企業は成長しているのでしょうか。
坂本: 女性の活躍推進が進む企業ほど経営指標がよい、という調査結果は多数あります。株式市場においても、取締役に女性を起用している企業はしていない企業に比べてリターンが高く、良い業績を挙げている。また、男女勤続年数格差が小さい企業、再雇用制度がある企業、女性管理職比率が高い企業のほうが利益率が高い傾向が見られます。
坂本: また、ワークライフバランスに取り組む企業のほうが生産性が高い、という結果もあります。「ワークライフバランス」という言葉はとかく女性だけの問題だと考えられがちですが、本当は男女両方の問題です。例えば、ワーキングマザーの働きやすさだけに考慮すると、どうしても周りの男性にしわ寄せが行ってしまいますよね。全体としての“働き方改革”をしており、男性にとっても女性にとっても働きやすい会社。こういった会社は生産性も高いという傾向が見られます。
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