ファストファッション時代にどう対応する? ビームス創造研究所の青野賢一さんに聞く働くこと、生きること(後編)(1/3 ページ)

» 2013年12月12日 16時54分 公開
[印南敦史,Business Media 誠]

働くこと、生きること:

 終身雇用が崩壊し、安定した生活を求め公務員、専業主婦を目指す人が一定数いる一方、東日本大震災などを経て、働き方や仕事に対する考えを大きく変えた人は多く、実際に働き方を変えた人も増えている。仕事一辺倒から、家族とのかかわり方を見直す人も多くなっている。

 さまざまな職場環境に生きる人々を、多数のインタビュー経験を持つ印南敦史が独自の視点からインタビュー。仕事と家族を中心としたそれぞれの言葉のなかから、働くとは、生きるとは何かを、働くことの価値、そして生きる意味を見出す。

 この連載『働くこと、生きること』は、2014年にあさ出版より書籍化を予定しています。


プロフィール:

青野賢一

 1968年東京生まれ。明治学院大学卒業後、ビームスに入社。販売、プレスなどの業務を経て、2010年より「ビームス創造研究所」クリエイティブディレクター。執筆、選曲、各種ディレクションを通じて、 ファッションと音楽、文学、アートを繋げる仕事を手掛ける。現在、文芸誌『IN THE CITY』やWebマガジンなどで連載を担当。著書に『迷宮行き』(BCCKS 天然文庫)がある。


 →これからの時代に必要なのは? ビームス創造研究所の青野賢一さんに聞く(前編)

“そこそこいい”ものを求める層に、どうアプローチしていくか

 アルバイトからスタートした1987年と現在とでは、消費のあり方も大きく変わった。ファストファッションが主流になっていることからも推測できるとおり、特に時代の変化を敏感に意識せざるを得ないのがファッション業界だろう。衣料や雑貨のセレクトショップ、BEAMSでクリエイティブディレクターを務める青野賢一さんの目に、消費行動の変化はどう映っているのだろう?

 「よく言われるのは、もはやファッションはサブカルチャーだということ。“ファッション好き”は特殊で、メインストリームじゃないというか。事実、トップモードみたいなものはメインじゃなくなって、一部のコアな人たちのためのサブカル・コンテンツ的な位置付けになっている。いまはみんなそこそこ普通で、ヘンな格好をしている人は減りましたよね。ファッションの民度は高くなって平均点も上がっているんですけど、そこから上の部分を追いかけている人たちは少ない」

 「そしてファストファッションでは、“そこそこいい”とか“悪くない”っていうことがポイントですよね。『ファッショナブルに見えなくてもいいけど、かっこ悪くはなりたくない』っていう人が、いまはすごく多い。だとしたら、そういう人たちにどうアプローチをしていくかを考えなきゃいけない。洋服屋さんが尖っていた昔なら、そこを見なくてもよかった。ただ、会社の規模も大きくなったいまは、そこは絶対に無視できない。とはいえそのゾーンに奇抜なものを紹介しても響くはずがないので、『ならば、どういうアプローチが必要なのか?』っていうことですよね」

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