「インフラ友達」がいますか? おひとりさま時代を生き抜くための友人関係博報堂・吉川昌孝のデータで読み解く日本人(2/4 ページ)

» 2013年12月06日 06時20分 公開
[吉川昌孝,Business Media 誠]

地縁、職縁に加え社会の土台も弱体化

 かつて家族を代替、補完してきた人間関係も決して盤石ではありません。東日本大震災後、地域のつながりの大切さが再評価され、その復活は求められてはいるものの、まだまだ再建途上ですし、なにより少子化の影響で、子供をきっかけとした地縁が生まれにくい状況は今後も続くでしょう。「日本株式会社」の異名を誇った職縁は、非正規社員や転職者の増加で弱まっています。新しい縁として期待されたネットのつながりも「ソーシャル疲れ」に代表されるように、リアルなつながりを代替する存在になるとはとても考えられません。

 人間関係が希薄になる中で、日本の社会システムへの不安も高まっています。高齢化の影響で、医療制度、年金、社会保障など、これまでの安心の素が不安の種へと変わりつつあります。加えて毎年のように起こる天変地異。想定外の被害を与える大規模自然災害の増加、特に地震と集中豪雨は多頻度化し、熱中症を引き起こすような酷暑も多発化しています。こうした状況に対して、これからの日本人は1人で対応していかなければならないことが今後も確実に増えていく。その時に注目されるのが「友達」なのです。

揺らぐ公への安心意識(出典:生活定点調査)

「インフラ友達」はマイ・インフラ

 ひとり時間の増加、地縁、職縁の希薄化、社会制度の揺らぎ、自然災害の増加……。こうした厳しい時代環境を生き抜くためには、既存の社会インフラの活用はもちろんですが、それ以上に、自発的自律的に生活の土台(=インフラ)は、自らの意思と手でつくっていかざるを得ません。ピンチの時に自分のことを守ってくれる、攻める時も強力な後ろ盾になってくれる、そんな存在が求められます。必要な機能を、身内や拡大する友達ネットワークの中から、自分で発見し、自分で依頼する。「インフラ友達」とは、自作のインフラ=マイ・インフラであると同時に、どんな役割を相手に求めたいのか、さらに言えば、相手に対し自分がどんな役割を果たせるのか、互いに役割を発見しあった上で、成立する関係でもあるのです(これを生活総研は《役割》発掘サイクルと呼んでいます)。

 冒頭申し上げたように、現在は友達の数が自然と増えてしまう時代です。友達の意味も曖昧(あいまい)化しています。しかし、自律的に動くことが求められ、生活の土台の一部でも誰かに機能してもらわざる得ない時代には、無尽蔵に増える友達は、別の観点から見れば、くめども尽きぬ機能の泉とも言えます。友達のすそ野が広がれば広がるほど、より多くの友達の中から「インフラ友達」を選択することができるわけです。さらに、その友達の中に役割を発見することは、曖昧になりつつある友達の価値を明確にすることにもつながるでしょう。

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