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経費は年末に増やせ! 個人事業主の節税対策【前編】消費税8%時代の確定申告(3/4 ページ)

» 2013年12月04日 08時00分 公開
[奥川浩彦Business Media 誠]

売り上げ、経費、控除を理解する

 個人事業主の場合、売り上げや経費を集計する期間は1月から12月となる。法人の場合は決算月を任意に決めることができ、3月決算であれば4月から翌年の3月が集計期間となるが、個人事業主の1月から12月は変更することはできない。

 売り上げは単純に足し算をするだけなので理解するのは難しくない。注意点は入金された金額ではなく、請求した金額で集計することだ。例えば2013年12月に納品し12月末に請求書を出し、2014年の1月末に入金された売り上げは2013年の売り上げとして集計する。これを発生主義と呼ぶ。

 経費は仕事の内容により対象が異なるが、仕事をするために必要な支出だ。一般的には交通費、通信費、水道光熱費、接待交際費、修繕費、消耗品費、家賃などがこれに当たる。経費の集計は少し複雑で、例えば自宅で仕事をする場合には電気代など仕事と家庭で消費する経費を按分(あんぶん)する必要がある。しかし実際に仕事で使用した電気代を正確に把握することは不可能だろう。

 独立したころに筆者が読んだ税金関係の書籍には、「部屋数やコンセントの数で比率を計算する」などと書かれていたので、それを参考に少なめにしていた。2012年までは名古屋の自宅で仕事をしていたが、2013年1月に川崎にオフィス兼住居を借りると名古屋の電気代は激減した。考えてみれば奥さんは昼間仕事に出掛け、子供達は学校へ行くので滞在時間は筆者が圧倒的に長い。その間、PCやエアコンが稼働するので仕事で使用する電気代は部屋数やコンセントの数の比率の倍以上となった。

 クルマに関する経費も駐車場代、車検代、保険代、税金、ガソリン代などを按分する必要があるが、仕事で使用した分を正確に把握することは難しい。使用した日数で按分するなどと書かれた本もあるが、これも正確とは言い難い。

 筆者の場合、普段プライベートでクルマを使うのは週に1回スーパーに買い出しに行く程度で距離にして10キロほど。カメラマンの仕事で川崎から鈴鹿サーキットを往復すると1000キロほど走行する。必ずしも日数ではないはずだ。家族で1台のクルマを共用するとさらに複雑となる。

 自宅とオフィスを分け、仕事専用のクルマを用意すれば按分の必要はなくなるが、現実にそうすることは難しいので、自分なりの根拠を持って按分するしかないだろう。

 経費に関してはグレーな部分も多い。先日「カツラは経費になるが、植毛は経費にならない」といった話が芸能ニュースで流れたが、何が経費になり、何が経費にならないかを明確に線引きするのは難しい。カツラと植毛が経費として落とせるかの真意は不明だが、容姿が仕事に影響するタレントやアイドルなら経費で落とせても、筆者が経費で落とすのは不可能だ。

 仕事でレースクイーンを撮影して気付いたは、ほとんどのレースクイーンが瞳を大きく見せたり色を付けたりするカラーコンタクトを使用していることだ。一般の仕事ではコンタクトレンズは経費で落とせないが、容姿が重要な仕事ならこれも経費として認められそうな気がする。

レースクイーンの目 レースクイーンのカラコンは経費?

 趣味に支出するのは経費とならないが、趣味が仕事になれば話は別だ。実際に筆者は30年ほど前から趣味でサーキットに通い写真を撮っていたが、独立後に仕事となり現在では海外のサーキットへ撮影に行くこともある。新規事業の立ち上げのため専門書や機材を購入すれば経費となる。拡大解釈をすれば、趣味で稼げるようになりたいと強い意志を持っているなら、趣味への投資も経費になるかもしれない。

セパン 長年の趣味への投資は仕事となった

 詳しくは節税対策のところで説明するが、経費を積み上げることが個人事業主の節税の最重要ポイントだ。支出の中で経費にできるものを見逃さないように注意しよう。

 控除は基本となる部分はサラリーマンと同じだが、青色申告特別控除や小規模企業共済等掛金控除といった個人事業主ならではの控除も存在する。これらも詳しくは節税対策のところで説明するが、個人事業主の節税に有効なのでよく理解したい。

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