日本は各国と協力し、中国の“野心”を封じ込めよ藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2013年12月04日 07時30分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


photo 中国が設定した東シナ海における防空識別圏が各国に波紋を広げている

 中国が新しい防空識別圏を設定したことが、さまざまな波紋を呼んでいる。今週中に日本、中国、韓国を訪問する米国のバイデン副大統領は、地域安全保障の懸念を習近平主席に伝えるとされている。中国の外交にとっては決してプラスではないと思うが、制裁などの積極的な反対でもない限り、多少の反発は覚悟の上で既成事実を積み重ねて現状の変更を狙うということだろう。

 中国が狙うのは、西太平洋への軍事的な進出だ。それは米国に対して、中米で太平洋を“分割統治”しようと持ちかけたことからも見て取れる。西太平洋に出られれば、潜水艦搭載型の核ミサイルで米本土を狙える。北朝鮮が米本土を狙えるミサイルを保有したと言っているのと同じ論理だが、北朝鮮の場合は地上発射型であるため、場所を特定されやすく、いざとなれば先制攻撃を受けるというリスクがあった。

 太平洋への進出は米国から海の覇権を奪うことと、南シナ海での海の覇権を確立するという意味があるように思える。資源開発ではなく資源の輸送ルートとして、海の覇権は中国にとって死活問題になっている。輸送ルートと直接に接しているのはASEAN諸国のうち、ベトナム、フィリピン、インドネシアなど南シナ海に面している国だ。少し離れるがオーストラリアなども同様と言える。

 もちろん海が重要なのは中国に限ったことではない。資源を輸出したり輸入したりするのに、海上輸送を使わない国はほとんどないだろう。日本のように四方を海で囲まれた国では、パイプラインといった輸送手段も使いにくい。

 安全な資源の輸送手段を確保することは、安全保障上の重大な問題と言える。日本が核燃料再処理と高速増殖炉の研究を進めていたのも、少なくとも電力について外国への依存、すなわち海路への依存を減らせるというメリットがあったからだ。

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