海外人事の英語が分かればグローバル化は怖くないビジネス英語の歩き方(1/3 ページ)

» 2013年12月04日 08時00分 公開
[河口鴻三,Business Media 誠]

「ビジネス英語の歩き方」とは?

英語番組や英会話スクール、ネットを通じた英会話学習など、現代日本には英語を学ぶ手段が数多く存在しています。しかし、単語や文法などは覚えられても、その背景にある文化的側面については、なかなか理解しにくいもの。この連載では、米国で11年間、英語出版に携わり、NYタイムズベストセラーも何冊か生み出し、現在は外資系コンサルティング会社で日本企業のグローバル化を推進する筆者が、ビジネスシーンに関わる英語のニュアンスについて解説していきます。

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 中国経済が先行きの怪しさを増し、韓国が沈滞し、米国や欧州に元気がなくても、グローバル化は着々と進み、後戻りする気配はありません。ネット広告には、シンガポール、インドネシア、ベトナムなどでの日本人募集情報が珍しくありません。

筆者もとまどった欧米スタイルの人事採用

Linkedin ビジネスSNS「Linkedin」経由での採用も増えてきている

 米国や欧州の求人広告をあまり目にしないのは、相当数のヘッドハンティング会社が日本でも活動していることと、英語圏の多くの国では、人種を指定して求人することが違法とされていることに関係しているのでしょう。実際、米国の求人広告では、人種、性別、年齢に関する制限を入れることは禁止されています。

 筆者もニューヨーク勤務時代に、人を採用するときには当惑しました。一体どんな人が面接(interview)に来るのだろうか。男か女か、白人か黒人か、何歳ぐらいの人なのか。経歴書だけを見て面接をお願いするわけですから、直前までいろいろ気にかかります。でも、経験を積み、経歴書の読み方にも慣れてくると、たいていのことは見当がついてきます。

 一番のカギは高校、大学などの卒業年次です。米国は州によって多少の差はありますが、基本的に高校まで義務教育です。高校を何年に卒業しているか、大学の卒年はと見ていくとその人の年齢が大体分かります。性別はファーストネームでかなり分かるようになります。これらのことは、海外で採用に携わったことのある人は誰でも経験することですが、面倒なことでもありました。

 しかし最近では、ビジネス中心のソーシャルネットワークサービス「Linkedin(リンクトイン)」が、求職、求人のツールとして使われ、かつての年齢制限(age discrimination)など法的な制約はあまり意味をなさなくなっています。ユーザー自身が、本名、職歴、得意分野、学歴などを書き込むのが普通だからです。ときどき明らかに採用されないだろうという感じの常識を欠く書き込みもありますが。

欧米企業で「同期」の概念が伝わらない理由

ビジネスパーソン

 日本企業と外国企業の人事や採用のやり方における一番の違いは、採用権をどの部署が持っているかにあります。日本では、営業部門で人が足りないということになれば人事部門に「人を回してくれ」と依頼します。人事部門は、定期異動で対応するか、あるいは臨時の異動で対応するのかを決めますが、いずれにしても採用するのは人事部門の仕事です。

 一方、外資では人員を欲しい部門が採用計画を作り、面接などの採用プロセスも担当し、人選が終わってから人事部門に連絡します。人事部門は人事制度を説明して、給与額を提示します。この最後の給与の提示はオファー(offer)といわれ、その会社の中でのバランスを見るために人事部門にも相談しますが、最終決定は採用する部門が決めます。

 これは日本企業と外国企業の根本的違いを示しています。日本ではよく言われるように「会社という1つのカタマリに加わる」感じであるのに対して、海外では「その仕事に就く」ことから雇用主が自分の直属の上司になるという意識があります。実際外資では、平社員は係長に、係長は課長に、課長は部長にという具合に上下関係がはっきりしていて、会社を辞める時の理由も「上司とうまくいかない」が最も多くなっています。

 欧米の会社は、これをリポーティング ストラクチャ(reporting structure、直訳すれば報告構造)と呼び、これこそが会社あるいは組織そのものだという認識があります。別な言い方をすれば「組織とは役割の集合体であり、それぞれの役割はそのときどきに最もフィットする人に担ってもらう」というイメージです。従って、日本語でいうところの「役割を担う(hold the job)」感覚は、「役割を満たす(fill in the role)」という言い方で表現されることが多いのです。

 日本では、新人は1つのグル―プとしてまとまりをもち、一緒に泣いたり笑ったりしながら長い時間をかけて同じ会社のなかで生活し、ともに成長していくという感覚があります。これは海外企業と大きく違う点です。同期会という概念などは、相当説明しないと米国人には理解することさえ難しいでしょう。

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