JR北海道は今、何をすべきか――西武鉄道にヒントあり杉山淳一の時事日想(5/5 ページ)

» 2013年11月22日 08時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]
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JR北海道社員の誇りを回復するために

 実は、西武鉄道のグループビジョンとさまざまなプロジェクトについて、前述した部分は「乗客から見える場所だけ」。実際は社内向けの活動目標も定めている。「誠実であること」「共に歩むこと」「挑戦すること」の3本柱が元になっていて、内部統制システムの強化、法令遵守(コンプライアンス)の浸透などの指針が細かく定められた。

 従業員向けには、「グループビジョン定点調査アンケート」を毎年実施して、グループビジョンの進展、実現へ向けての環境調査、社内の課題の確認などを実施している。また、年に1回、グループビジョンに取り組んだ職場を「チームほほえみ賞」として表彰し、全職場で共有している。グループ社員がチームを作って経営陣に新施策を提案する「ほほえみFactory」を開催し、駅チカ保育所などが実現した。

 細かいところでは、「Good Jobカード」というシステムがある。グループビジョンに基づいて行動した部下に上司が渡す「ほめる制度」で、職場の雰囲気アップに役立っているようだ。

 西武鉄道は首都圏の通勤路線だし、JR北海道は広大なJR北海道域を網羅する鉄道である。地域も、企業の規模も、運輸サービスのあり方も違う。だから西武鉄道のイメージアップ作戦がそのまま通用するとは限らない。だいいち、JR北海道はかなりマイナスからのスタートだ。そして諸問題は解決していない。今からイメージアップキャンペーンを表に出せば、なにを浮かれているのだと批判の対象になる。

 しかし、諸問題が解決した後には次の一手が必要になる。その準備を今から進めたほうがいい。その理由は「社員の誇りの回復」だ。JR北海道はJR東日本から人材を受け入れ、施設整備について徹底的に改善していくという段階である。すべての問題が決着したら、次は信頼とイメージの回復という段階に入る。ここで西武鉄道への応援要請をオススメしたい。

厳冬期の夕張線を行く気動車。騒ぎの中、黙々と地域輸送の使命を果たす
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