家電の買い方が変わってきた!? ヤマダ電機赤字転落のウラ世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる(1/2 ページ)

» 2013年11月21日 08時00分 公開
[川瀬太志,Business Media 誠]
誠ブログ

 今回は家電量販店の話です。業界トップのヤマダ電機が中間決算で赤字に転落したようです。一体、何が起きているのでしょうか?

ヤマダ電機が初の最終赤字 4〜9月TVなど不振
ヤマダ電機は15日、2013年4〜9月期の連結最終損益が42億円の赤字(前年同期は139億円の黒字)になったと発表した。
従来予想(49億円の黒字)から一転、2002年の連結決算への移行後4〜9月期として初の最終赤字となる。薄型テレビなどの販売が当初見込みを下回った。海外の店舗閉鎖に伴う特別損失の発生なども響いた。
(2013年10月15日付 日本経済新聞)

(写真と本文は関係ありません)

 ここでちょっと整理してみましょう。最終赤字になった原因としては、以下の3点が挙げられます。

  1. 薄型テレビやレコーダーなどの主力商品の不振
  2. 多角化戦略で展開している住宅分野への人材投資や販促費用がかさんだこと
  3. 中国事業の見直しに伴う南京店などの閉鎖

 これらの理由を損益でみると、(1)は「売上高の減少」、(2)は「一般販売管理費の増加」、(3)は「特別損失の増加」になり、いずれも損益にはマイナスに働きます。

 ただ、(1)の売上の落ち込みはいずれ回復するでしょうし、(2)は戦略事業への先行投資的な意味合い、(3)は不採算店撤退の一時的な損失であり、これだけなら大きなニュースにはなりません。市況が回復して戦略事業が軌道に乗って、不採算店がなくなっていれば来年以降は業績も回復するでしょうからね。

家電の買い方が変わってきた!?

 おそらくこのニュースの一番のポイントはこれです。

アマゾンジャパンなどネット通販会社の販売価格に店頭価格を合わせる措置で販売する際の利ざやが縮小した。
(日本経済新聞同記事)

 家電量販業界では、従来から他社提示価格よりも安く販売するという「最低価格保証制度」が一般化しています。ヤマダ電機では今年の5月上旬から、その対象を家電量販業界の競合他店だけでなく、通販サイトの商品にも広げたようです。

 これは「ショールーミング」と呼ばれる購買行動に対抗したものです。「ショールーミング」とは、店舗で商品の実物を比較検討したあとに、ネットで安く購入することです。実際の店舗がショールームのように利用されるために、こう呼ばれています。

 今では、スマホを使ってお店で商品のバーコードを読み取るだけで、その場で簡単に価格を比較できるアプリもあります。アマゾンを筆頭とするインターネット通販サイトとの価格競争が激しくなって採算が悪化しました。これは、ネットショッピングの一般化により、消費者の家電の買い方が変わってきたということです。

 「利ざやが縮小した」とありますが、「利ざや」というのは「粗利率(売上総利益率)」のことです。「粗利率」は本業の採算性を見る上で一番重要な指標です。粗利率が悪化しているというのは本業に何かが起きていることになります。

 ヤマダ電機の場合、2012年9月中間期に「25.3%」あった粗利率が、この2013年9月中間期では「22.5%」まで落ち込みました。この粗利率の低下が一時的な要因ではなく、「家電の買い方が変わってきた」という事業構造上の要因であることが問題視されているのです。これは家電量販業界の存亡にかかわる環境変化とも言えるでしょう。

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