中国が抱える最大の国内問題とは?藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

» 2013年11月20日 07時30分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]
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“地方政府バブル”の克服が急務

 しかし中国が抱える最も大きな問題は腐敗ではない。市場原理で資源(ヒト・モノ・カネ)を配分するという構造に切り替える前の、いわば“地方政府バブル”をどう克服するのかがより重要になっている。地方政府は住宅や商業施設、工業団地、果てはテーマパークなどを開発するために、農地を転用してきた。これは地方経済を活性化するためであり、少なくともデベロッパーが土地を買い漁る限り、経済は活性化しているように見える。その土地を耕作していた農民にはわずかの補償金しか払われず、デベロッパーや地方政府幹部が潤う仕掛けでもあった。

 そして、たとえ腐敗を一掃できてもその過程で生じた不良債権は残る。不良債権がどの程度あるかは不明だが、正規ルート以外の金融ルート(いわゆる理財商品)を経由した貸し付けは最低でも130兆円、多い見積もりだと500兆円を超えるぐらい存在しているという。このほとんどは地方政府のインフラに融資されていると言われ、その多くが不良債権化するのではないかと懸念されている。

 もちろん土地バブルが復活すれば、この不良債権問題は鎮静化するだろうが、先進国の例でも分かるようにバブルがいったん弾ければ、それを処理し終わるまで経済は正常な軌道には乗らない。

 正規ルートにも問題はある。国有企業の中には銀行融資で生き延びている“ゾンビ企業”が存在するからだ。いま欧州で問題になっているものと原理は同じで、ゾンビ企業を処理することはゾンビ銀行を処理することになり、そのコストをどこかで負担しなければならない。もともと市場原理に基づかない資源配分をした結果であるから、これを処理するには相当の政治力が必要だ。習政権が、トウ小平(トウの文字は登におおざと)の言葉まで引いて、改革を強調したのはそのためと思われる。

 外国メディアは総じてこの3中全会に好意的だ。例えば英フィナンシャルタイムズ紙(リンク先は会員登録が必要)は、「習主席の改革計画で中国について楽観的になれる」と書いた。また英エコノミスト誌は「今後、国有企業や地方政府、さらには都市の中間層からも根強い抵抗に遭うだろう」としながらも、非常に前向きだと評した。

 中国が今後どう動くかは見守るしかないが、これまでのような高度成長は続かないだろう。7%という成長率は他国と比べれば高いとはいえ、バブルの処理をすることになればこの成長率を維持するのは相当困難な話である。

 “敗戦処理”を先延ばしにすれば(中国流に言えば)矛盾を深化させることになり、「爆発的な矛盾の解消」につながるだろう。しかしそれは社会不安を意味する。習政権が社会不安を広げることなく改革を実行できるかどうかは、党幹部やその家族も含め“社会的公正”を国民に納得してもらえるかどうかにかかっている。

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