「ザクとうふ」に学ぶ、遊び心とオタクの作品愛オタクの心をつかめ(2/3 ページ)

» 2013年11月13日 08時00分 公開
[寺尾幸紘,Business Media 誠]
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作品愛に弱いオタク

 相模屋は「なぜザクなのか?」という問いに、ザクが「名機であり、かつガンダムシリーズの名脇役、量産型、モビルスーツの基本」なのに対し、豆腐が「伝統食であり、食卓の名脇役、量産型、日本文化の基本」であるから相性が抜群だと答えている。こういった溢れる作品愛から生まれる肯定的なバカさにオタクは非常に弱い。この革新的な豆腐を手がけた鳥越淳司社長は熱心なガンダムファンであるそうだが、読者のみなさまには「溢れる作品愛は必ずオタクに届く」ということをまず学んでいただきたい。

 相模屋はその後、デザート仕様(砂漠とお菓子両方の「デザート」が見事に掛かっている)である『ザクとうふ Type D』と鍋用の『ズゴックとうふ』を開発・販売しており、「ザクとうふ」のプロモーション映像を踏襲して、ガンダム好きのオタクなら誰もが心をくすぐられるギレン・ザビ総帥の有名な演説風の紹介VTRを作成した。

 このVTRでは当然のようにギレン・ザビの声優、銀河万丈氏がナレーションに起用されており、ファンは期待を裏切らないザクとうふブランドにさらなる好感を抱くこととなった。そしてホームページでは「ズゴック鍋コンテスト」という、ズゴックとうふを使った写真コンテストを開催し、ガンプラやジオラマ好きのオタクを燃え上がらせた。

 このザクとうふ成功の理由は、まずプロモーションやコンテストも含めてネタが面白いことがあげられる。オタクは笑いの種になりそうなネタには積極的にアプローチしていく性向がある。また、オタクはTwitterやFacebookなどのSNSを使いこなす。つまり、面白いネタを上手にまくことで注目度を上げ、口コミという営業ツールによってその販売数を伸ばすことができるのだ。

 次に、名前の馴染み深さがあげられる。「ガンダム」や「ザク」という名称は世間的にもよく知られており、世の中にはオタクではないけれどガンダムファンだという人も多い。そんな馴染みのあるザクという単語が前面に出ているザクとうふは、多くの人をニヤつかせることに成功したのである。

 数年前、男前豆腐店の『男前豆腐』や『波乗りジョニー』という豆腐がスーパーマーケットなどで消費者の目にとまり人気が出たのをご存じの人も多いと思うが、ザクとうふには同じような魅力があるのだ。

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