「ザクとうふ」に学ぶ、遊び心とオタクの作品愛オタクの心をつかめ(1/3 ページ)

» 2013年11月13日 08時00分 公開
[寺尾幸紘,Business Media 誠]
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集中連載「オタクの心をつかめ」について

 本連載は寺尾幸紘著、書籍『オタクの心をつかめ 最強の購買欲を持つ顧客たち』(ソフトバンク新書)から一部抜粋、編集しています。

「オタク相手のビジネスはこうして展開せよ!」 

膨らみ続けるオタク市場。市場分析だけではない、具体的な成功や失敗例の解説も交え、すぐに応用可能なオタク相手のビジネスヒントを伝授します。「自分はオタクじゃないけど、オタク相手への商売はしたい」という人にオススメの1冊です。


溢れるガンダム愛がオタクをつかんだ「ザクとうふ」シリーズ

 読者のみなさまは「ザクとうふ」という豆腐をご存じだろうか? 群馬県に本社を置く相模屋食料株式会社という会社が、『機動戦士ガンダム』※に登場するジオン公国軍側のモビルスーツ「ザクII」の頭部を豆腐で模して、2012年の3月に販売したコラボレーション商品がこのザクとうふである。

※1979年に放送された地球連邦とジオン公国の宇宙戦争を描いたSFロボットアニメ。無印やファースト、初代とも呼ぶ。シリーズを含めて30年以上親しまれている大人気コンテンツであり、この作品を見ていないオタクはモグリだと言われる。最新作の『機動戦士ガンダムUC』に登場するオードリー・バーンはファーストからの流れで萌えざるを得ない。


 ザクとうふは一丁(相模屋は「丁」ではなく「機」を使っているが、本連載では分かりやすく「丁」と表記する)200円、全高52ミリ、重量200グラムで食シーンを水陸両用としたこの商品は多くのオタクに好意的に受け入れられ、なんと140万丁も販売された。単純計算すると、2億8000万円もの売り上げになる。

 パッケージに書かれた「キヌとはちがうのだよ、キヌとは!」(劇中に登場する明言「ザクとは違うのだよ、ザクとは」をもじったもの)の文字がガンダムファンをクスリと笑わせ、「アムロ、いただきまーす!」といった会話が日本中のオタクの食卓で交わされたのである。

「ザクとうふ」と「ヒート・ホーク・スプーン」

 この商品はイチから研究・開発されており、ザクIIのフォルムやディテールが徹底的にこだわり抜かれている。底のフィルムにはジオン公国のエンブレムが印刷されており、緑色の専用パック(モノアイ付き)から取り出しても豆腐がザクの形を保つのだ。

 さらに、ザクIIの武器である「ヒート・ホーク」を模した「ヒート・ホーク・スプーン」を付ける事で見事な世界観を演出している。

 ザクとうふの爆発的人気の背景には、プロモーションの上手さもあげられる。ザクとうふの紹介VTRはSF調に作られており、『機動戦士ガンダム』内でナレーションをつとめる永井一郎氏がしっかりと起用されていた。さらにVTR後半ではザクとうふが工場で量産され、出荷されていく姿が量産型のザクそのもので、オタクの心をわしづかみにしたのである。

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