時代の空気を読めない男が、“ヒット作請負人”になれた理由これからの働き方、新時代のリーダー(後編)(4/5 ページ)

» 2013年11月13日 08時10分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

仕事をしていて「良かった」と感じた瞬間

宇宙兄弟(1)』(モーニングKC)

土肥:「『自分がいい』と思った作品」と話されましたが、具体的にはどんなモノなのでしょうか。

佐渡島:純粋に、自分の心がどれだけワクワクしたかどうかですね。人間の心って、意外とワクワクしないものですから。

土肥:例えば『宇宙兄弟』のとき、1話目を読んだときにワクワクされた?

佐渡島:ちょっと違いますね。私は、作家の小山宙哉さんを新人時代から担当していますが、彼のことを「スゴい作家になる」と言い続けていました。でも周囲の声はちょっと違っていました。「本当に?」といった感じで。でも、私は「スゴい作家になる」と信じていました。

 『宇宙兄弟』の1話目は50ページくらいなのですが、それが完成するまでに500ページ以上描いてもらっています。

土肥:ということは、10回以上描き直してもらっている(汗)。

佐渡島:原稿を読んで「ダメだと思います」、修正してもらった原稿も「ダメだと思います」、さらに修正してもらった原稿も「ダメだと思います」といった感じですね。そんなやりとりを繰り返して、最後に「これ、“鉱脈”がありそうです」と言いました。

 1話目の仮原稿ができたとき、それをカバンの中に入れていました。飲み会があったときには、その場にいた人たちに読んでもらう。そして、反応を聞く。自分でも何度も何度も読む。そして「よし、大丈夫だ!」と思ったときに、連載をスタートさせる自信が湧いてきました。

土肥:そのときって、どのような感覚なのでしょうか。

佐渡島:「『この作品は面白い』と感じない人は、もう友達になれない」といった感覚ですね(苦笑)。連載がスタートするまでに、半年ほどの時間がかかりました。それまでにものすごく入れ込んできたので、そんな感覚になるのでしょうね。

土肥:連載がスタートするまでに半年……その間、小山さんは無収入ですよね。佐渡島さんからダメ出しをされて、何度も何度も描き直しても、原稿料は発生しない。幸いにも半年後に連載をスタートさせることができましたが、ひょっとしたら連載自体がボツになっていたかもしれません。

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