土肥:いま「宣伝方法などで工夫」と話されましたが、佐渡島さんの工夫はとてもユニークですよね。例えば、『宇宙兄弟』のときには美容院に本を置いて回ったとか。
佐渡島:はい。『宇宙兄弟』の場合は、20代の女性に読んでもらいたかった。「宇宙」と聞くだけで、この層の人たちは興味を示しません。でも兄弟の関係とかストーリーの雰囲気は、20代の女性でもハマると思っていました。
でも本のタイトルや装丁などは、20代の女性を遠ざけるものになっていました。ちょっとでも近寄ってもらえるように、美容院に本を置いてもらうように本を400冊ほど配りました。
土肥:美容師って、お客さんの髪を切るときにいろいろと話をしますよね。「いまはこのドラマが面白いですねえ」といった感じで。そこで「いま『宇宙兄弟』にハマっているんですよ。面白いですよー」と言ってもらえれば、口コミ効果としては大きいですよね。
話を聞いたお客さんは気になるので、ちょっと読んでみたくなる。髪を切ってもらっているときに、『宇宙兄弟』の本を読む。そして面白かったら、帰りに本屋で買うかもしれない。こうした口コミ効果もやはり計算に入れていたのでしょうか。
佐渡島:口コミをどうやって広げていけばいいのか、といったことを考えていました。「口コミ」と聞くと、ネット上のシェアを思い浮かべる人が多いかもしれません。例えば、Facebookで100人がシェアするだけでも、かなりの数字ですよね。
もちろんネット上の口コミも大切なのですが、私は美容師に注目しました。美容師は1日に何人担当しているのか。実際、美容院に行って話を聞いたところ「1つの席に1日3人くらい」とのことでした。お店に10個の席があったら、1カ月に900人のお客さんがやって来る。仮に3カ月ごとに来店するとしたら、1店舗につき2700人。そのうち1500人くらいに話してくれれば……と思いました。
土肥:それはかなりの数ですね。そんなにたくさんの人に話してくれますかね。
佐渡島:美容師さんって、同じことを話す傾向がありますよね。(笑)
土肥:ハハハ、確かに。私の知り合いは、このように言っていました。「同じ美容師がいつも同じことを聞いてきたり、話してきたりするので、髪の毛を切ってもらっている間は“狸寝入り”する」と。
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