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» 2013年11月13日 08時00分 UPDATE

ビジネス英語の歩き方:英語を社内公用語にする意味を取り違えてはいけない (1/2)

ビジネスのグローバル化が進むと、母国語として英語を話している人と外国語として英語を学んでいる人が同じ土俵で英会話することになります。このとき、“同じ”英語を使いましょうという考え方が「BELF」です。

[河口鴻三,Business Media 誠]

「ビジネス英語の歩き方」とは?

英語番組や英会話スクール、ネットを通じた英会話学習など、現代日本には英語を学ぶ手段が数多く存在しています。しかし、単語や文法などは覚えられても、その背景にある文化的側面については、なかなか理解しにくいもの。この連載では、米国で11年間、英語出版に携わり、NYタイムズベストセラーも何冊か生み出し、現在は外資系コンサルティング会社で日本企業のグローバル化を推進する筆者が、ビジネスシーンに関わる英語のニュアンスについて解説していきます。

 →「ビジネス英語の歩き方」バックナンバー


ビジネス英語

 今から25年ほど前。ある都心のビルで米国企業の幹部ミーティングが開かれていました。出席者は10人、ほとんどが米国人です。日本人はその会社の部長職を務める人とコンサルタントとして呼ばれている筆者だけ。

 この会社は当時米国最大の電話会社で、日本へのビジネス拡大を狙って日本法人を立ちあげて半年ほどというタイミングでした。会議が始まると男性のみの参加者から盛んに発言が飛び出します。大声でしかも早口、スラングも使い放題、まさに喧々囂々(けんけんごうごう)です。

英語を使ったビジネス会議には公平な言語ルールが必須だ

 当然使われるのは英語のみで通訳はいません。社内の会議にコンサルタントを呼んだだけですから、通訳など必要ないわけです。

I disagree.(私は反対だ)

That’s a bullshit!(たわごとを言うな!)

 こんな乱暴な言い方が飛び交います。そうかと思えば、

The due diligence should be done once again. Figures need to be scrutinized carefully.(デューデリジェンスはやり直さなくてはダメだ。数字は厳格に精査すべきだ)

といった、普段は使わないような難解表現を使うケースもあります。筆者自身もそうでしたが、このミーティングの唯一の日本人社員は明らかにこのやり取りに閉口し、とても発言などできずにいました。

 議題はある日本企業を買収するかどうかでした。30分ほど過ぎたところで、それまで沈黙していた日本人社員が「もう我慢できない」という表情で、座ったまま右手を大きく挙げました。みなびっくりしたように沈黙し、その人に視線を投げます。

 何か話したいのだという分かりやすいサインが参加者に伝わると、その人はゆっくりと、しかしはっきりとした英語で「買収には、こういうリスクがある」という意見を述べました。この発言で空気が変わり、議論はより冷静なものに変わっていきました。議論白熱に見えて実は堂々巡りのやり取りのために、ずいぶん長い時間が費やされていたのです。

英語の社内公用語化を進めるならBELFを導入すべき

ビジネス英語

 この日の光景を久しぶりに思い出したのには理由があります。前回紹介した「ベルフ=BELF(Business English as Lingua Franca:リンガフランカとしてのビジネス英語)」(参照記事)が、いかに必要かという実感を持ったシーンだったからです。

 英語での会議で、しかも米国人や英国人が主導する会議では、ジョークや皮肉が飛び交います。また、相手に反論するために、めったにお目にかからない「scrutinized(精査する)」などという単語が意識的に使われます。

 英語を日常生活で使わない国々でも、英語のビジネスミーティングは頻繁に開かれます。そこに米国人や英国人がいれば、英語に苦手意識がある日本人は、どうしても発言しにくい空気に支配されてしまいます。

 このような事態に陥るのは、英語で会議を始める前に何のルールも定めないからです。その結果、発言の中身より声の大きさや多さが会議の流れを作ってしまいます。BELFでは、英語のネイティブスピーカーが自分たちだけにしか通じないジョークや時事ネタなどを使わないようにするなど、会議の参加者全員が発言しやすいようなルール作りをしようとしています。

 特に欧米以外の会社で英語の社内公用語化を進めようとするときには、米英の英語を使うのではなく、よりシンプルで奇をてらわない英語、つまりリンガフランカとしての英語を使うことが重要です。

 よく知られているように、楽天、ファーストリテイリング、ソフトバンクなど、グローバル展開を目指す企業は社内会議を英語で行うことが増えています。カルロス・ゴーン氏率いる日産では1人でも非日本人がいればミーティングは英語になります。

 日本以外でもこうした動きは進んでいて、韓国のLG、オランダのフィリップス、フィンランドのノキア、ドイツのヘンケル、バイエルといった企業の社内公用語は英語になりました。文書や会議はその原則に沿って作成、運営されています。

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