コラム
» 2013年11月11日 07時20分 UPDATE

高齢者=弱者?:高齢者向けの商品が売れない理由 (1/2)

なぜ売りたいのに、わざわざ売れなくなるような言葉を発してしまうのだろうか。ある会社は高齢者向けの商品を発売することになったが、「「高齢者はシニアとかシルバーとは呼ばれたくないので、そのような表現はしないようにしている」という。

[川口雅裕,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ


 なぜ、売りたいのに、わざわざ売れなくなるような言葉を発してしまうのだろうか。

 高齢者向けの商品を新しく発売することになった会社があり、その話を聞いたが、「高齢者はシニアとかシルバーとは呼ばれたくないので、そのような表現はしないようにしている」そうだ。高齢者市場に注目する会社は増加の一途だが、同じように考える会社は多い。確かに多くの人は30歳代くらいから実際の年齢と自覚している年齢が乖離(かいり)していく傾向にあって、高齢者も10歳や20歳くらいは若い気分で暮らしている。従って、年寄り扱いされるのを嫌うのは当然で、アンケートをとってみれば「シニア、シルバーと言われたくない」と回答する。だから、そうは呼ばないというのだが、おかしな話だ。

 お客さまに買っていただくためには、「私には、この商品が必要だ」と自覚してもらわねばならない。売ろうとしている商品が高齢者向けなら、より多くの人に高齢を自覚してもらおうとするのが当然だ。なのに「まだ、シニアなんていう年齢ではないですよねえ」などと若い者扱いするから、高齢者は「まだ必要ない」と思いこみ、結果としてその商品は売れなくなる。ターゲットが目の前にいるのに「あなたはタッゲートじゃないですよ」と言っていたら売れるはずがない。ダイエット食品の販売員が、太った人に「スマートな体型で何の問題ありませんよ」と言うようなものであり、塾の講師が、成績のよくない子に「悪い点数をとったくらいで、悩まなくていいよ」と言うのと同じだ。

 問題は、売る側がシニアやシルバー、高齢者や老人という言葉にネガティブなイメージを抱いていることにある。「人の欠点を口にするものではない」「人が気にしていることを指摘してはいけない」と教えられて育ったが、年をとったことは欠点でも何でもないし、肉体や感覚が衰えるのも皆が同じように経験する当たり前のことである。それなのに、高齢者や老人を年老いたかわいそうな人たちだと考え、見下す。「弱い者イジメをしてはいけない」というのと、まるで同じ理屈である。高齢者向けの商品の販売に苦戦するのは、高齢者に自分がターゲットだと思ってもらえないからであり、その根本的な原因は、売る側の高齢者に対する視点や考え方にあるということになる。

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