日本社会のモラルは低下している? 続発する食品偽装窪田順生の時事日想(3/3 ページ)

» 2013年11月05日 13時00分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]
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融通のきかない社会

 例えば、「鮮魚」だ。

 「鮮魚のムニエル」と言いながら、実は冷凍食材を使っていたとかいう話だが、瞬間冷凍して鮮度を保っていたのだから、解凍したって「鮮魚」であることに変わりないじゃないかという見方もある。鮮魚か解凍かも明確に消費者に開示せよというのなら、日本中の居酒屋にある「刺身盛り合わせ」の多くが、「解凍した刺身の盛り合わせ」に変える必要に迫られるだろう。

 遠洋で取れるマグロなどの魚は冷凍されるのが当たり前だ。つまり、これは「メニューの表示」というものをどう考えるのかというルールの話であり、「偽装」とはキッチリと分けて考えなくてはいけない問題なのだ。

 ところが、今や「鮮魚」や「地野菜」というのを日本中のホテルが続々とメニューから外している。なぜ「偽装」と「メニュー表示の問題」をごちゃまぜにしているのか。

 この元凶は、言うまでもなく「阪急阪神ホテルズ」である。

 「コンプライアンス」と「情報開示」ということに盲目的に従うあまり、自分たちの頭で、「偽装」と「メニュー表示の問題」を整理して考えることをせず、とにかく全部公表すりゃあいんだろと、すべてを「誤表示」のくくりにするという強引な言い訳をした。

 その“悪しき前例”に業界全体が引きずられてしまっているのだ。一業者と問屋で起きた食中毒を日本全体の焼肉屋へ飛び火させ、日本国民にユッケや生レバーを食えなくさせたことからも分かるとおり、日本の食品行政は面倒が起きたら、「くさいものにはフタ」という手法をとる。

 こういうガチガチに融通のきかない社会はまわりまわって、消費者に不利益をもたらす。自らが生み出したルールにとらわれるあまり、杓子定規な解決策しか考えられない。低下しているのは、「モラル」などではなく、「柔軟な考え方」ではないか。

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