広告市場の景気が少し上向いてきたとはいえ、6兆円市場を奪い合うのは消耗する戦いだ。課金で成功しているのは、“ニコ動”や“ソーシャルゲーム”くらいだろう。広告と課金によるビジネスのポートフォリオを組み立てざるを得ない。
日本はガラケーで大きなコンテンツ市場を作ったものの、スマホへの移行で広告市場がガラポンになっているので、再設計だ。
それより大事になってるのがeコマース業界だろう。国内ネット小売り企業主要40社の売り上げ規模が合計約1兆円、全小売の売上に占める比率が5%になった、という報道があった
「小売り、ネット通販1兆円 アマゾンに対抗13年度主要40社売上高」
(日経電子版、2013年2月16日)
2007年の日本のネット小売りと小売り全体の売上比はおよそ1.5%とされているので、急拡大したことになる。今後、この領域をどう広げるべきだろうか。
今後は、課金や流通パッケージを含むプラットフォームそのものの競争が本質的に行方を左右するだろう。
これも先ごろの報道によるが、海外へのテレビ配信サービスに関して争われていた問題について、最高裁が原告であるテレビ局の訴えを認め、勝訴を確定させた。一見、著作権などのコンテンツの権利が守られたかに見えるが、一方でそれは日本国内で、コンテンツのクラウドサービスを行うのは難しいということを明確にしたものでもある。
こうなると、コンテンツを流通させる「プラットフォーム」としては、GoogleやAppleなど、主要な海外のプレイヤーに取られるということになりかねない。結局、テレビ局は生殺与奪の決定権を海外企業に握られることになる可能性がある。勝ったように見えて実は、国ごと負けるのかもしれぬ。
肝心なのは、コンテンツよりもソーシャルサービスだということだろう。
マルチスクリーンをソーシャルメディアがどう絡み取って行くか。マルチスクリーンの在り方は、筆者的なノマドだったり、我が息子的な3スクリーンだったり、同僚的なモバイルだったりするが、その人たちは皆ソーシャルメディアでつながる。
ただし、そのソーシャルプラットフォームは、twitterだったりmixiだったりFacebookだったりLINEだったり……、と毎年変化しているわけで、まだまだ落ち着かない状況だ。
そのメディア環境がどう発展するかはユーザーの力量に左右される。この点において、日本のユーザー力は高いと言えるだろう。
ドワンゴの川上会長が言うには、「日本のニートはネットができる程度に豊かで、かつ24時間つながっている“ヒマ人”であって、その人たちのクリエイティビティがやたら高い。その100万人を超えるユーザーが日本のネット社会を構築している」と。
うむ。だからこそ「バルス祭り」※ではTwitterの同時Tweet世界記録を打ち立てるわけだし、初音ミクも育つわけだし、炎上大国と称されるほどのトラブルも巻き起こすわけだ。
次のイノベーションは、スクリーンじゃないのではないか、と考える。
TVが60年、そしてPCとケータイが20年。その後をスマホやタブレット、そしてデジタルサイネージが襲い、マルチスクリーンと呼ばれるようになったわけだが、そこにまたスマートTV(関連記事)が現れて、一巡した。この次のイノベーションは別のところから来るような気がしてならない。
例えば、ロボットやウェアラブルコンピュータ。ロボットやおもちゃが電波を受けてダンスをするなど、「モノ」が表現してコンテンツになる。もしくは、服や家電やクルマがネットでつながって交信する。技術的には難しくはない。あるいは、FabLaboのムーブメントも注目したい。
人と人のコミュニケーションだけでなく、モノとモノ、マシン・トゥ・マシンになるので、情報そのものが爆発的に増える。そうしたビッグデータの世界と、いま議論しているマルチスクリーンの世界は、恐らく、地続きなのだろうと感じる。
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